画像や映像の「きれい」を、どう判断するか?

画像や映像の「きれい」を、どう判断するか?

情報量が少ない画像は本当にきれい?

いま、身近な画像や映像のほとんどがデジタル化され、スマートフォン・地上デジタル放送・映画などで、きれいな風景や商品などを見ることができます。でも、実物と比べて、それは本当に美しいのでしょうか? なぜならディスプレイやスクリーンで見ている画像は、カメラで撮った情報を「0」と「1」のデジタル信号に変換し、圧縮・削減されたものだからです。送信できる情報量に制限があるので、制作者や放送局は少ない情報量で表現せざるを得ず、私たちはそれを見るしかありません。

「きれい」は数値化できる!

画像を美しいと感じる感覚は、人それぞれに違います。そこで「きれいの基準」を数値化する研究が行われてきました。目安となるのは対象物の輪郭がどこまではっきりしているかと、どこまで細密に表現されているかです。つまり輪郭がはっきりしていて、細かく再現できていればいるほど、人は「きれい」と感じることになります。
またディスプレイの性能は画素数で表現します。画素とは画面を構成する最小単位の点のことです。人間の目は、対象物を点の集まりとしてとらえるため、点の数が多いほど画像は鮮明になり、美しいと感じるのです。4Kや8Kのテレビは、フルハイビジョンテレビの約4倍、16倍の画素数で画面がつくられています。

最終的に美しさを判断するのは人間の脳

画像データの美しさの差異は、コンピュータでも調べることができますが、美しさを最終的に判断するのは人間の脳です。ですから、画質の美しさを評価するために、人間の脳波や脳血流などの、生体情報を計測する研究も進んでいます。この研究では、画像や映像を見た時に、人間の脳(前頭葉)の血流が変化することまではわかってきました。
きれいな画像や映像をつくるためには、デジタル保存技術のほかに、クリエイターたちの感性も大きく関わってきます。これからものづくりをめざす技術者は、美しいものを見分ける感性を磨くことも大切なのです。

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富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 教授 堀田 裕弘 先生

富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 教授 堀田 裕弘 先生

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情報通信工学、情報工学

メッセージ

私の専門は情報通信工学で、大学と企業を含めて30年以上、研究を続けてきました。「身近な画像や映像が本当にきれいなのか」というテーマのほかに、情報圧縮された画像や映像を見る仕組みや、もとのオリジナルの美しさとは何か、また美しさをどう数値化して表現すればいいかなどに取り組んでいます。
高校生のあなたには、ぜひ画像や映像の中の素晴らしさを感じとり、五感を鍛え、感性を磨いてほしいと思います。そうすることで、これからの新しい「ものづくり」ができると確信しています。

先生への質問

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