最先端の医療用画像情報のコンピュータ解析で見えるものとは?
コンピュータで鼻息を撮り解析する
鼻腔(びくう)の異常を調べるにはどうすればよいでしょう? そこから出る鼻息を測ることでできます。鏡面上に鼻息を吹きかけ、その曇り(鼻息)の画像が左右対称であるか、十分な大きさがあるかなどを診ます。曇りはすぐに消えるので、撮影記録できれば治療に役立ちます。園児の鼻腔の異常を調べることも多く、撮影装置が恐怖心を与えるものではうまく検査できません。そこで、カメラが視界に入らないよう顔の両側に、また鏡表面ぎりぎりに極小カメラを2つ配置し、その2つの画像をコンピュータ合成するシステムを開発し、左右から撮った2つの画像から、あたかも上から見たようなひずみのない画像を作り出すことに成功しました。
ハイビジョンの「超解像」技術で、がんを見つける
放射線治療では、標的のがんの位置(境界)を正確に知ることが重要です。放射線を使いますが、線量を上げれば患者の体に負担をかけます。とはいえ、低い線量では解像度の粗い画像しか得られません。そこで、粗い画像を鮮明な画像に変える「超解像」技術を応用すれば、低い線量で得られた粗い画像を情報処理して解像度の高い画像に変換できます。超解像の画像で、がんの境界を正確に特定できるのです。
「ゆらぎ」を吸収する解析技術で、細胞を観察
iPS細胞など、細胞研究が大きな注目を集めています。細胞の評価も重要で、細胞成長を観察します。顕微撮影した無数の細胞の動きを人の目で判断するのは大変なので、コンピュータで正確に判断させる研究が進んでいます。細胞の観察では、隣の細胞に接触したり形を変えながら成長する細胞を、ほかと区別して認識する必要があり、その時間的・空間的違いの幅、つまり「ゆらぎ」を吸収して理解するシステムでなければなりません。想定していたものと少し違うからといって認識できないのでは困ります。知能的な認識システムは「ゆらぎ」に左右されません。「ゆらぎ」を吸収して解析する技術は、音声や顔の認識などの分野で用いられ、正確な自動認識ができるのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 工学部 電気情報系学科 教授 近藤 克哉 先生
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