地震のメカニズムを明らかに カギは水か?
無機質なイメージの岩盤層に「水」が存在する
地下100キロくらいの世界を想像したことはありますか。岩盤が延々と続く無機質なイメージを持っているかもしれません。しかし、地下深くには「水」が存在し、それがマグマの生成や地震の発生に関わっていることが、近年の研究で明らかになりました。
地球の表面は、十数枚の「プレート」という巨大な岩盤によって構成されており、大陸プレートと海洋プレートとが接している部分では、比重が重い海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込んでいきます。その際、海洋プレートの岩盤の亀裂内や、鉱物内に化学的に結合していた水が絞り出され、浅部に移動するのです。
水の存在がなければ地震も発生しない!?
地震は、「海溝型地震」と「内陸地震」の2種類に大別されます。前者は海洋プレートに潜り込まれた大陸プレートに歪みが蓄積し、それが一気に跳ねあがって発生するものです。後者は大陸プレート内の割れ目(断層)を境に岩盤が、上下や水平方向にずれることによって発生するものと考えられています。ただ、割れ目は強大な圧力で押さえつけられているので、そう簡単に動くものではありません。そこに水が介在することによって潤滑剤の役割を果たし、地盤が滑るのです。「地震大国」と言われる日本ですが、地震が活発に起きている地域は、地下の岩盤がより多くの水を含んでいると考えられます。
地震波の速度などから水の状態を推測
水が存在する岩盤は、地震波が伝播する速度が遅くなったり、地下で電流が流れやすくなったりします。そこで、それらのデータを複数地点で収集し、地下の水の状態を把握する研究が進められています。地震が起きる可能性が高い地域を特定したり、将来的には正確な地震予知につなげたりするためです。ただし、目で見ることができず、得られるデータも少ない地下の状態を調査するので、少ないデータからより多くの情報を引き出せるよう、さまざまな工夫を重ねることが必要です。
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富山大学 都市デザイン学部 地球システム科学科 教授 渡邊 了 先生
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