踊るリハビリ! 脳の仕組みに着目した「ニューロダンス」のパワー
「ニューロリハビリテーション」って何?
病気や事故などによる障がいから、身体機能を回復させるためのリハビリテーションというと、関節の可動域を広げたり、筋力をアップして歩行できるようにしたりする、身体の機能そのものにアプローチする考え方がこれまでは主流でした。しかし最近では、神経科学や画像解析技術が発達したことで、脳の仕組みに着目した「ニューロリハビリテーション(神経リハビリテーション)」という考え方が医療の世界に広がってきています。ある動作をする時に、脳のどの辺りが活性化しているかなどの詳細を知ることで、身体の不具合と脳の働きを結びつけたリハビリテーションを行おうというものです。
楽しさややる気を引き出す「ニューロダンス」
食事や入浴などの日常的な動作、レクリエーションなどの作業活動を通してリハビリを行う作業療法にも、ニューロリハビリテーションの考えを取り入れたものが出てきています。そのひとつが、ダンスと組み合わせた「ニューロダンス」です。音楽に合わせて身体を動かすことは、人間の本能として「楽しい」という感情を刺激し、やる気を引き出します。また、ダンスでは平行棒の間を行ったり来たりするよりも複雑な動きをしますが、それは脳の中で身体を動かすことを担う「大脳基底核」という部分をフル稼働させることにもつながっているのです。
パーキンソン病への効果が明らかに
音楽をかけて楽しいと感じながら動くことは、身体を使うと同時に、頭の中もフル回転で使います。ニューロダンスにおいては、「心」「身体」「脳」の3つの要素にアプローチして、病気の特性に合った活動を組み立てることが重要です。
大脳基底核の異常で、歩行がしづらく、うつ傾向になるなどの症状がみられるパーキンソン病のために開発されたニューロダンスが効果的であることが、すでに明らかになっています。今後はさらに、発達障がいや認知症などに効果的なニューロダンスの活用が広がることも期待されています。
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先生情報 / 大学情報
森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部 作業療法学科 教授 橋本 弘子 先生
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