いつの時代も、共同体がある限り演劇がある

いつの時代も、共同体がある限り演劇がある

人はなぜ集まるの?

勉強や仕事は1人でもできますが、普通、人は学校や会社に集まって学び、仕事をします。現代ではもちろんネット上に集まることも可能です。けれどもネットでの交流を好む人さえも、実際に集まることがあります。動画サイト『ニコニコ動画』は年1回、「ニコニコ超会議」を開催し、数万人がわざわざ足を運びます。なぜ人は集まるのでしょう? それは、そういう場が共同体には必要だからです。誰かと考えを交換し、そこでしか感じられない喜びを味わいたいという欲求が人にはあるのではないでしょうか。演劇はこうした共同体の仕組みと深く関係しています。

目的は「祝祭」と「議論」

演劇は、おもに2つの役割を担いながら古代から続いてきました。1つは、非日常の祝祭空間でエネルギーを発散する場として、もう1つは「アゴーン」(古代ギリシア語で論争、競技の意味)の場の提供です。国や文化を問わず、人々は演劇を見て非日常性を味わい、また共同体の問題について考え、議論してきたのです。例えばミュージカル『ビリー・エリオット』は、英国のさびれた炭鉱の町の少年がダンサーをめざす物語ですが、歌とダンスが素晴らしいだけでなく、そこには地方都市との格差や階級の問題などが示されています。このように観劇体験は、楽しさはもちろん共同体の問題を探求する機会も与えてくれるのです。

「語られないこと」は何か

演劇が共同体と関連している以上、政治性を切り離すことはできません。歴史をふり返ると、粛清のように権力を持つものが政治的「磁力」を演劇であからさまに使用することもありました。その一方で、ポピュラー・エンターテインメントでは基本的に観客が聞きたくない、見たくないものは消去されているので、ここにも見えない「磁力」があることがわかります。「語られないこと」に注目すると、これまで見えなかったものが見えてくるでしょう。つまり演劇を研究することは、家庭、地域社会、国家、国際社会など共同体をさまざまな角度から検討し、考察する力を養うことにほかなりません。

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椙山女学園大学 外国語学部 英語英米学科 ※2024年4月開設 教授 藤岡 阿由未 先生

椙山女学園大学 外国語学部 英語英米学科 ※2024年4月開設 教授 藤岡 阿由未 先生

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演劇学、比較演劇、英国演劇

メッセージ

大学の学びの中心は、自ら問いをたて、手がかりを集めて解き、そのプロセスを人にわかるようにすること―つまり問いを通して他人とコミュニケーションすることです。そのためには、豊富な知識を得られるよう自分だけでコツコツと勉強する時間も必要ですが、対話や議論によって問いを誰かと分かち合うことも同じように大切だと私は思います。問いを解く手がかりは、異なる価値観がぶつかる対話や議論の中にこそあるからです。高校生のあなたも身近な友だちや先生、家族とさまざまなトピックについて議論を始めてみませんか?

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