人間の尊厳に関わる機能を脳科学からサポートする言語聴覚士
脳機能が深く関わる「話す・聴く」という行為
病気などで突然、話したくても話せない、食べたくても食べられない、といった状態になる人がいます。当たり前にできていたことができなくなるのはダメージが大きく、人間の尊厳や生きがいに関わります。この言語機能や聴覚、摂食嚥下などのリハビリに関わる専門家が言語聴覚士です。なかでも、話すことは、相手の話を正確に聞き取って情報を処理し、適切な語を選択して言語にするという脳機能による高度な行為です。MRIやCTといった医療機器で脳の状態を検証し、本人の症状や特性を照らし合わせて、その人に残された機能を最大限に生かしてサポートしていきます。
脳科学に基づくエビデンスが重要に
例えば会話が思うようにできない人は、その原因が口を動かす運動機能か、あるいは脳機能の障害なのかを見極める必要があります。原因によってアプローチが異なるからです。
脳の障害によって主に左方向を認識できないケースがあり、「朝」という文字の「月」しか見えないという人もいます。また、見えているのに認識できない、聞こえるのに理解できない、理解しているのに正確に行為ができないといった人もいます。
そうした本人の状態と脳機能の関係を検証し、科学的に解明していくことが必要です。適切な療法を提供できたり、本人や家族にエビデンスに基づいて説明できることで安心して対策が取れるようになったりもします。
領域が広く、チーム連携が求められる言語聴覚士
とはいえ、脳科学はすべてが解明されておらず、「この脳の状態ではこの症状が出る」とは断言できません。不明瞭な部分が多く、それらを一つひとつ検証することが、より効果的な新しい療法の開発にもつながるでしょう。
さらに、子どもの発達障害や高齢者の飲み込む力なども言語聴覚士の領域であり、学校の先生や看護師、介護士が言語聴覚士の手助けを求めることも少なくありません。対象年齢や領域も幅広く、そうした多職種の人たちと連携して、その人にとって最善の方法を考えることも必要とされます。
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