人はなぜダンスをする? 健康にも貢献する身体表現

人はなぜダンスをする? 健康にも貢献する身体表現

娯楽だけではないダンス

人類は生まれた頃からダンスをしてきたと考えられています。フランスのラスコー洞窟にある壁画にもダンスをする人が描かれているほどです。踊る理由はさまざまで、娯楽としてはもちろん、祈願のため、戦闘のため、そして健康のためにもダンスは利用されてきました。
2020年3月に、鹿児島で新型コロナウイルスの収束を願って伝統的な疱瘡(ほうそう)踊りが行われました。もともとは天然痘という病気の治癒を願うダンスです。しかし「病気を治す」という広い意味で解釈して踊られました。天然痘を治すための踊りは世界各地にあり、インドやナイジェリア、さらにブラジルでも受け継がれています。

ダンスの基盤となる身体表現

インドでは、天然痘治癒祈願のダンスをする人々の一部は舞踊の身体作りのために「カラリパヤット」という武術でトレーニングをしています。カラリパヤットはインドの伝統医学であるアーユルヴェーダに基づいており、柔軟性や健康の促進に役立ちます。現地ではカラリパヤットの師匠が町医者のような役割を果たしており、けがをした人々の治療も行っています。カラリパヤットで基本となる8つの動物のポーズがあり、例えばゾウのポーズは脚の付け根のリンパを刺激することがわかっています。その結果、体全体が温まって血流がよくなり、免疫力が高まるのです。

カラリパヤットと健康

カラリパヤットによる柔軟性の向上は、日本で教育の観点からも注目されています。日本では子どもたちの外遊びの時間が減り、柔軟性が低下していることが問題視されているからです。そこでカラリパヤットを保育園や小学校の子どもたちに教え、効果を分析する研究が始まりました。
一般的に大人になってから体を柔らかくすることは難しいため、インドでも5歳や6歳のうちからカラリパヤットを始める人が多いのです。カラリパヤットによって子どもたちの柔軟性がどの程度向上するのか、適切なメニューは何かなど、研究が行われています。

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フェリス女学院大学 文学部 コミュニケーション学科 教授 高橋 京子 先生

フェリス女学院大学 文学部 コミュニケーション学科 教授 高橋 京子 先生

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舞踊学、スポーツ人類学

先生が目指すSDGs

メッセージ

新型コロナウイルスの影響で、ダンスなどの芸術文化は痛手を負いました。その結果、生活の質が低下したと多くの人が実感しています。
何かを好きになって夢中で取り組むことは、心の健康のためにも必要なのです。この先あなたのモチベーションが下がるような事態が起きたとしても、好きなことをあきらめるのではなく、追究するための方法を考えましょう。ダンスを人類学で探ることもそうしたアプローチのひとつです。新たな発見があるので興味を持ってもらえるとうれしいです。

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