ちいさく生まれた赤ちゃんの発達を助ける理学療法士
低体重の赤ちゃん
赤ちゃんは子宮内で40週程度を過ごすことで体重が3000g前後になり、母体の外に出る準備が整います。しかし、早産などの原因により2500g未満の低体重で生まれる赤ちゃんもいます。子宮内で十分な発達過程を経ていないと、さまざまな機能の未発達がみられるため、NICU(新生児集中治療室)で治療を受けなければなりません。治療には、医師や看護師のほかに運動発達の専門家である理学療法士が加わり、日々の生活に必要な運動の土台が順調に形成されているかという視点から治療に関わります。
理学療法的な3つの手助け
早産で生まれた赤ちゃんは、本来は子宮内にいた時期だと考えると、おなかの中にいたときを再現するような姿勢で寝かせる必要があります。関節や筋の具合などを考慮して、タオルやクッションを使いながら、赤ちゃんが丸くなってゆっくりと眠れるような姿勢に整えます。これが1つめの手助けです。2つ目の手助けは呼吸のリハビリテーションです。子宮内での発達の中で、呼吸機能の獲得はかなり後の方です。自力で呼吸できない場合には赤ちゃん用の人工呼吸器を装着します。理学療法士は、空気がうまく入るような姿勢に整え、痰(たん)などの分泌物を出させて呼吸を助けます。そして3つ目は、外部からの話しかけによる刺激を送り、徐々に身体を動かして発達を促します。
生涯発達ケア科学の研究
NICUを退院した赤ちゃんとご家族に対しては、その後の発達や育児の状況を観察し、専門的介入の成果を検証します。日本では出産の高齢化などにより低体重で生まれるリスクが高まっていますが、一方で周産期医療の進歩により赤ちゃんの救命率は上がっています。低体重の赤ちゃんを健康な成長に導くために、理学療法士の技術を高めることが重要です。
このように赤ちゃんから高齢者になるまでの全年代を対象に、どのような医療的・保健的・福祉的なサポートがあれば生き生きとした生活を継続できるかを研究するのが「生涯発達ケア科学」という学問です。
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先生情報 / 大学情報
森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部 理学療法学科 准教授 澤田 優子 先生
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