診療放射線技師へのニーズの増加に合わせて進む教育機器の開発
高まる診療放射線技師へのニーズ
病院で、X線やCT(コンピュータ断層撮影装置)による撮影を受けるとき、放射線の照射を行うのが、診療放射線技師という国家資格を持った人です。診療放射線技師の資格を取るには、大学などの指定された養成学校で学び、卒業後、国家試験に合格する必要があります。近年は、乳がん検診のひとつであるマンモグラフィー検査などの需要が高まったことで、女性技師の需要も増え、養成学校も増加傾向にあります。
数度ずれたら撮り直し
診療放射線技師の最も基本となる業務のひとつが、X線撮影です。現在、X線による撮影方法は、ほぼ確立されており、さまざまな部位における撮影の角度も決まっていてマニュアル化されています。しかし、斜めから撮影する「斜位」は、角度がほんの数度違っただけで患部が鮮明に写らないため、ベテランの技師でも神経を使います。診断に適さない場合は、撮り直しを行います。しかし、患者さんに不要な被ばくをさせてしまうことになるので、極力、避けなければなりません。角度を固定できるポジショニングブロックという補助具がありますが、一秒を争うような緊急性のある患者さんなど状況によっては使うことができないこともあるため、ある程度は自分でコツを覚える必要があります。
技術向上をめざすシミュレーション機器も
診療放射線技師が、どんな部位でも安定した撮影ができるようになるまで、半年ぐらいはかかります。もちろんベテラン技師の指導の下、経験を重ねることが重要ですが、少しでも早く技術を習得するために、技師をめざす学生や新人技師向けのシミュレーション機器が開発され、注目を集めています。
AR(拡張現実)や加速度センサーを使ったシステムでは、仮想表示された角度計を目安にファントム(人体模型)を動かすだけでパソコンに傾斜角度やあらかじめ撮影しておいたCTデータから演算されたX線画像が表示されるので、X線装置がない場所でも練習できます。診療放射線技師の増加にともない、こうした教育機器の開発も重要になってきています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 健康福祉学部 放射線学科 准教授 関根 紀夫 先生
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