究極の光学顕微鏡で、可能性を秘めたミクロの珪藻を解明する

究極の光学顕微鏡で、可能性を秘めたミクロの珪藻を解明する

生態系の一翼を担うミクロの珪藻

淡水にも海水にも生息する、ミクロの生きものである「珪藻(けいそう)」は、肉眼では見えないほどの大きさですが、光合成をして、海洋においては一次生産の半分近くを担っていると言われています。珪藻類をオキアミが食べ、オキアミを魚が食べ、その魚を私たちが食べているわけで、珪藻は生態系を根本的に支えているのです。この珪藻の死骸が大量に沈殿し、長年の間に有機物が分解され、殻だけが残って堆積してできた化石からなる岩石が珪藻土です。これにはさまざまな特徴があり、環境にやさしい自然素材としても、近年注目されています。

珪藻がシリカを形成するプロセスを解明

珪藻は、色や模様の美しいシリカ(殻)を形成します。光の回折限界を越えたナノスケールの解像度を持つ三次元超解像蛍光顕微鏡によって、珪藻がシリカを形成するプロセス(バイオミネラリゼーション)を観察し、そのメカニズムを明らかにしようという研究があります。超解像蛍光顕微鏡は分子一つ、ナノメートルのレベルのものを鮮明に見ることができる顕微鏡です。この顕微鏡を使って、生きた珪藻を蛍光染色して、どのようなタンパク質や脂質がシリカの形成に関わり、シリカがどう形作られていくのかを観察していくのです。

海洋資源として多くの可能性を秘めた珪藻

珪藻のシリカ形成のメカニズムを解明し、さらに蛍光性シリカ被殻を人工的に作り出すことができれば、ナノ光デバイスなどへの応用や太陽光エネルギーによるナノデバイスの直接生産、二酸化炭素の吸収をともなう有用資源回収法としての可能性も出てきます。養殖の餌として、魚介類を効率よく育てたり、珪藻の油を資源として活用したりするということも考えられます。さらに、日本は資源の乏しい国だけに、海洋に豊富にあり、環境にもやさしい資源として珪藻を活用する研究は大きな可能性を秘めているのです。

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先生情報 / 大学情報

山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 准教授 堀田 純一 先生

山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 准教授 堀田 純一 先生

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応用生命システム工学

メッセージ

私は、子どもの頃から光学顕微鏡でミクロの世界を観察するのが好きで、大学では光学について学びました。現在の私の専門は、分子一つが見える究極の感度と分解能を持つ光学顕微鏡の開発と応用で、2年前までベルギーで5年間研究をしていました。ヨーロッパで生活する中で、研究や日常生活において、若い頃に身につけた知識と技術がとても役に立つということを感じました。あなたが毎日一生懸命学んでいることは、必ず役に立ちます。これからの日本を支えていくのはあなたです。一日一日を大切にがんばってください。

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