高齢者を笑顔にする「老年看護」

高齢者を笑顔にする「老年看護」

おなかに小さな穴を開けて栄養を補給する

食事は人間にとって最も基本的な楽しみの一つです。ところが年を取ると、口から食べることができなくなることがあります。嚥下(えんげ)障がいと呼ばれる症状で、食べ物をうまく飲み込めなくなるのです。こうなると口から栄養剤などを補給したときに、誤って肺に入り肺炎を起こす恐れがあります。そんな人のために使われるのが、おなかに小さな穴を開けて胃に直接栄養剤を入れる「胃ろう」というものです。穴を開けるといっても小さなものなので、元気になればふさぐことができます。

高齢者の心地よさを重視する

年を取っても訓練次第で、持っている力を最大限発揮できるようになります。だから食べ物をきちんと飲み込む練習をすれば、胃ろうは要らなくなる場合もあるのです。また食べることと並んで大切なのが、出すことです。どんな生き物でも、食事と「お通じ」はセットです。ところが認知症が進むと、適切なタイミングでトイレに行くのが難しくなります。そこで施設などではオムツをあてるのです。そうすれば看護する側にとっては処置が楽ですが、オムツをあてられる人は決して心地よくはありません。

少しでも楽しく暮らせるように

認知症の高齢者をベルトなどで抑制することもあります。看護師の注意を理解できなくなったり、決まりごとを守れなかったりするので、安全確保のために動けなくするのです。「立ち上がってはいけませんよ」と指示しても、歩き回ろうとする人には、ある意味仕方がない処置かもしれません。しかし、ベルトをする代わりに、看護師が少し余計に注意して見回り、動こうとするときにそっと抑えてあげてもいいのです。これは、高齢者が気持ちよく過ごすために、看護する側が余分に手間をかけるやり方です。少し時間がかかるかもしれませんが、高齢者に対しては、できる限り優しく接することを考えるのが、老年看護では非常に重要なポイントなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

愛媛大学 医学部 看護学科 教授 陶山 啓子 先生

愛媛大学 医学部 看護学科 教授 陶山 啓子 先生

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看護学、老年看護学、老年社会科学

メッセージ

看護学では、人との関わりの中で多くのことを学びます。長い間看護師として仕事をしてきた中で私は、思いもよらないことが自然にできてしまう不思議な経験を何度もしました。そのような出来事を実現できたのは、患者さんと関わる中でエネルギーをもらったからです。おかげで私は看護師として充実した日々を送ることができました。将来、看護の道をめざす人は、人の気持ちを考えたり、想像したりする習慣をつけておいてください。すばらしい看護師の条件、それは人の気持ちがわかることです。

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愛媛大学は、「学生中心の大学」の実現をめざして、学生の視点に立った改革を進めています。そして、すべての学生が入学から卒業までの過程で、自立した個人として人生を生きていくのに必要な能力を習得することをめざしています。そのため本学では、正課教育のほか、正課外のサークル活動(正課外活動)やボランティア活動、留学、下級生への学習支援(準正課教育)等を通じ、その能力を磨くための多くの機会を設けています。あなたの可能性が広がる学び舎、それが愛媛大学です。