高齢者を笑顔にする「老年看護」
おなかに小さな穴を開けて栄養を補給する
食事は人間にとって最も基本的な楽しみの一つです。ところが年を取ると、口から食べることができなくなることがあります。嚥下(えんげ)障がいと呼ばれる症状で、食べ物をうまく飲み込めなくなるのです。こうなると口から栄養剤などを補給したときに、誤って肺に入り肺炎を起こす恐れがあります。そんな人のために使われるのが、おなかに小さな穴を開けて胃に直接栄養剤を入れる「胃ろう」というものです。穴を開けるといっても小さなものなので、元気になればふさぐことができます。
高齢者の心地よさを重視する
年を取っても訓練次第で、持っている力を最大限発揮できるようになります。だから食べ物をきちんと飲み込む練習をすれば、胃ろうは要らなくなる場合もあるのです。また食べることと並んで大切なのが、出すことです。どんな生き物でも、食事と「お通じ」はセットです。ところが認知症が進むと、適切なタイミングでトイレに行くのが難しくなります。そこで施設などではオムツをあてるのです。そうすれば看護する側にとっては処置が楽ですが、オムツをあてられる人は決して心地よくはありません。
少しでも楽しく暮らせるように
認知症の高齢者をベルトなどで抑制することもあります。看護師の注意を理解できなくなったり、決まりごとを守れなかったりするので、安全確保のために動けなくするのです。「立ち上がってはいけませんよ」と指示しても、歩き回ろうとする人には、ある意味仕方がない処置かもしれません。しかし、ベルトをする代わりに、看護師が少し余計に注意して見回り、動こうとするときにそっと抑えてあげてもいいのです。これは、高齢者が気持ちよく過ごすために、看護する側が余分に手間をかけるやり方です。少し時間がかかるかもしれませんが、高齢者に対しては、できる限り優しく接することを考えるのが、老年看護では非常に重要なポイントなのです。
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