知っているようで知らない、化石発掘調査の方法と醍醐味
化石発掘の方法
化石の発掘では、博物館に展示されているような全身の化石が丸ごと発見されることは少なく、実際は骨や歯の小さなかけらが見つかることがほとんどです。哺乳類の歯の化石は特に重要です。哺乳類の歯の形は生えている部分や食べる物によって異なるので、歯の化石から多くの情報が得られます。発掘した化石は土や泥汚れを落とし、写真やスケッチで記録した後、型をとって元の形を再現します。そして文献や標本と見比べながら、それがどの動物のどの部分なのかを類推していきます。どの時代の化石なのかは、周囲の地質を調べることで判別します。
世界中が発掘の舞台
化石は世界中に見られますが、より見つかりやすいのは地表に岩盤がむき出しになっているようなところです。モンゴルにはそういった場所が多く、地面に化石が落ちていることも珍しくありません。モンゴルのほかにもアメリカやアルゼンチンでは恐竜の化石が見つかりやすく、日本でも福井県から岐阜県にかけてのエリアや、兵庫県の丹波篠山(たんばささやま)で発掘されています。
海外での発掘作業は、現地のスタッフとともに行います。日本とは風習も違えば、作業のスピードも違います。こうした現地の環境に適応し、うまくコミュニケーションをとりながら作業を行うことも、化石発掘をする上で大切な要素です。
DNA分析による進歩
これまで、哺乳類の進化は発見された化石の形態によって決められていました。しかし、近年では分子生物学が発達し、化石のDNA分析によってより正確な分類ができるようになったことで、新たな事実も明らかになっています。例えばクジラとカバは遠い種類だと考えられていましたが、DNA分析によってとても近い種類であることがわかりました。クジラだけでなく現存する哺乳類はすべてDNA分析ができるので、発掘された化石の形状とDNA分析の結果を組み合わせる研究が主流になってきています。今後も生物の進化を解き明かす大きな発見がなされるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
愛媛大学 理学部 理学科 地学コース 教授 鍔本 武久 先生
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