機械の中でも雷が生じる? 安全に電気を使うための研究

雷はなぜ起きる?
普段は電気を通さない場所に電気が通る現象を「放電」といいます。代表的な放電現象は雷です。雷が起きるとき、多くの場合雲の下側はマイナスに、地面はプラスに帯電しています。両者の間にある気体分子は、通常は電気を通しません。しかし高い電圧がかかって空気の中にいたマイナスの電気が加速されると、別の気体分子にぶつかり電子を放出させます。これが地面にあるプラスの電気に引き寄せられた結果、雲と地面の間に一時的に「電気の通り道」ができて、放電が起こります。
謎だらけの放電を探る
放電の発生頻度を下げるためには、真空に近い状態にして、電圧がかかる物体同士の距離を長くするのが理想です。しかし現代では機械が小型化しているため、「微小ギャップ」と呼ばれるナノメートル単位の短距離でも放電が起きています。半導体デバイスの中や、電気自動車のモーターに使われるエナメル線の微小な欠けなど、ごく小さな空間内でも放電が起こる可能性があるのです。放電のメカニズムは特定の場面でしか解明されておらず、微小ギャップに関してはほとんど分かっていません。
安全に電気を使うために
放電が発生する電圧や、発生した場合の伝わり方などが分かれば、これに耐えられる安全な設計を考えられます。そのために、意図的に起こした放電を高速カメラで撮影したり、コンピュータシミュレーションで計算したりする研究が行われています。
例えばシリコン製の土台の上に数百ナノメートルの距離をあけて電極を2つ置き、半導体デバイスを模した放電の様子を観察しました。するとプラスの電圧をかけたときは放電が土台の上をまっすぐ進み、マイナスの電圧をかけたときは宙に浮いてアーチ状になることがわかりました。シリコンの土台は酸化膜でコーティングされており、放電が進む際にマイナスの電気を帯びます。電極や気体分子から生じる電子もマイナスの電気を帯びているため、反発して宙に浮いたのではないかと考えられます。放電に耐えられる構造を探るためにも、さらなる研究が求められています。
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湘南工科大学工学部 電気電子工学科 准教授岩渕 大行 先生
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