半導体から環境問題、農作物まで何でも使える「放電プラズマ」
活躍する放電プラズマ
温度を上げると、物質は分子間結合の変化により固体・液体・気体に状態が変わります。気体にさらにエネルギーを与えると、原子が電子とプラスイオンに電離した「プラズマ」の状態になります。高電圧をかけて加速した電子を分子に衝突させて作った電離状態が「放電プラズマ」で、有害物質の分解や殺菌など、さまざまな用途に応用されています。植物の発育を促進する効果もあり、これは放電により空気中の窒素や酸素の化学反応が誘発されて、肥料の成分である硝酸や亜硝酸が生成されるためです。雷はプラズマそのものであり、雷が落ちると作物がよく育つということから「稲妻」の漢字が使われるようになったといわれています。
プラズマを使った微細加工
4フッ化炭素を放電させると、非常に反応性の高い「Fラジカル」という粒子がプラズマ中に作られます。このFラジカルはシリコンと結合して気体を作る特性があります。シリコンの板にFラジカルを反応させるとシリコン原子と結合して気化し、シリコン原子1個分の穴が開きます。これが半導体の微細加工に使われる「プラズマエッチング」という方法の原理です。最先端半導体の国産化を後押しするため、プラズマエッチングに最適な気体や電圧などについて、シミュレーションを使った基礎研究が進められています。
エネルギーの「錬金術」
ほかにも、「バイオガス」から放電を使って水素を取り出す研究が行われています。家畜の排せつ物や下水処理場から発生するバイオガスには、温室効果の原因となるメタンガスや二酸化炭素のほか、有毒な硫化水素が含まれています。硫化水素は、太陽光や風力発電の電力を使った放電により分解されて、メタンと二酸化炭素から燃料となる水素と一酸化炭素をそれぞれ生成します。低品質な燃料であるバイオガスと、供給が安定しないという点で低品質な電力である自然エネルギーから、水素という高品質エネルギーを生み出すもので、チャレンジングな取り組みとして期待されています。
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