講義No.08050 教育 数学

「公平なテスト」って、どんなテスト?

「公平なテスト」って、どんなテスト?

M1クランプリの点数は公平か

テストは公平でしょうか? 結論からいうと公平ではありません。そこで不公平の原因となる誤差を最小化する必要があります。お笑いのM1グランプリでは、審査員がつけたそのままの点数「素点(そてん)」を足して順位をつけています。ところが、審査員の点数を偏差値に直すと順位が入れ替わることがあります。
偏差値とは平均を50、標準偏差(ばらつき度)を10にしたものです。素点では高い点数をつける審査員の影響が大きく出ますが、偏差値はそれを矯正してくれます。しかし、偏差値にも弱点があります。0点の人にも点数がついてしまうのです。そのことが公平でない結果をもたらすときもあります。

テストの内容を公平にするには

テストの目的から公平を考えるとどうなるでしょう。入試などの選抜試験では合否ラインの点数差が大きく出る問題にしたほうが公平です。また、到達度を測るテストでは簡単な問題から難しい問題まで平均的に配分するべきでしょう。
しかし、能力をより正確に測るには、人によって異なるテストをしたほうが公平なのです。最新のコンピュータを使ったテストでは、まず偏差値50の問題を出し正解した人には偏差値55の問題を、不正解の人には偏差値49の問題を出します。これを繰り返して能力差を明確にします。同じテストで競ったほうが公平だと思うかもしれませんが、必ずしもそうではない、という考え方もでてきています。

点数に優先する社会の公平感

今までは、誤差をいかに最小化するかという視点で考えてきました。しかし、公平の考え方は社会によって違います。アメリカのように民族的、人種的な差別が存在する社会では、医者や弁護士のような社会的影響力が大きい職種を民族・人種ごとに均等に配分することが公平だと考えられています。教育や収入が違う人々を同じ基準で測ることはできないからです。入学試験でも、白人の最低点が黒人の最高点を上回っていても黒人を合格させる場合があります。社会の公平感がテストの結果よりも優先されるケースもあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

九州大学 教育学部  教授 木村 拓也 先生

九州大学 教育学部 教授 木村 拓也 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

教育学、統計学

メッセージ

自分が何に向いているかを判断するのは難しいかもしれません。私も10年間ほど教育哲学の研究をしていましたが、数学が得意だったこともあり、途中で統計学を使う教育測定評価論の分野に専門を変更しました。
科目の好き嫌いはあるかもしれませんが、嫌いだから勉強しないというのではなく、さまざまな可能性を閉ざさないためにも勉強することが大切です。年齢とともに価値観は変わることもあります。意外に興味なかったことが好きになり、役立つこともあります。人生は長いので、いろいろなことにアンテナを広げて勉強してください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

九州大学に関心を持ったあなたは

九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。