江戸時代にも土地バブルがあった!?

江戸時代にも土地バブルがあった!?

江戸時代に土地売買が行われていた

バブルが崩壊するまで、日本には土地神話がありました。土地価格は右肩上がりだったので、土地を制する者が資産を制するとさえ言われていました。しかし、土地価格は古来からバブルが崩壊するまで本当に右肩上がりだったのでしょうか。例えば、江戸時代の農村部では土地の売買が制約されていました。ところが、都市では町人が土地を担保とした金銭の貸借や、土地の売買を積極的に行っていたのです。

現金よりも土地の価値を信用していた

江戸時代の商人が土地などの不動産に投資したのは、現金よりも土地の方が安全だったからです。幕府は時代が後になるほど、財政難から貨幣改鋳を実施します。具体的には、金貨1枚あたりに含まれている純金の割合を少なくしたため貨幣価値が下がり、物価の上昇を引き起こしました。慶長時代には80%あった金の含有量は、元禄時代には50%台にまで下がります。商人はリスクが高い現金よりも、金融資産として安全な土地を所有します。また、農村に比べ都市は自由でした。幕府は確実に徴収できる農村の土地に税(年貢)をかけ、商人への課税は臨時的なものにとどめました。このため、商人は資産を増やすために合理的に行動することができたのです。

イメージにとらわれず実体経済から状況を見る

こう見ると江戸時代の都市部の商人は、私たちとほとんど同じ経済活動をしていることがわかります。ただ違うのは、私たちが個人資産を増やすことを目的にしているのに対し、彼らは「家」を存続させること、つまり家産を維持することを第一の目的としていたと思われます。江戸時代というと、封建社会で庶民は苦しい生活を強いられていたというイメージがあるかもしれませんが、当時の実体経済を調べると、必ずしもそうではないことがわかってきます。

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九州大学 経済学部 経済・経営学科 准教授 鷲崎 俊太郎 先生

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経済学では、一つの事実から複数の解釈を導き出すことができます。高校で学んだ歴史も複数の解釈の一つかもしれません。解釈には世代の差も影響します。生きている時代背景、学んだ学問の傾向によっても、解釈が異なってくる場合があります。経済学や経済史の目的は、そのような複数の解釈の中から時代が要求している相対的によい解釈や政策を見つけ出すことにあります。時代によって克服すべき課題や負うべきリスクは違いますが、そのような中でよりよい解釈ができる能力を身につけてください。

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