面積・体積の計算の裏技? 格子点の数と面積・体積の深い関係
格子点の数から面積を求める
複雑な多角形の面積を求めるとき、頂点の座標がすべて整数の値をとる格子点なら、面積は多角形に含まれる格子点の数から導くことができます。すなわち、(面積)=(多角形の内部にある格子点の数)+(多角形の境界にある格子点の数)/2-1で求められ、これを「ピックの公式」と呼びます。例えば、頂点が(0,0)(3,0)(0,3)である三角形の面積は、内部の格子点が1個、境界の格子点が9個なので、1+9/2-1=9/2です。
3次元版ピックの公式
ではこれを3次元に置き換えて、格子点を頂点に持つ多面体の体積を求めてみましょう。3次元版ピックの公式は、2次元に比べるとより複雑です。(0,0,0)(1,0,0)(0,1,0)(1,1,m)を頂点とする三角すいを考えます(mは正の整数)。この三角すいの格子点は頂点の4個だけで内部にはないので、格子点の数はmの値によりません。一方、体積はm/6なので、2次元のピックの公式のように、内部と境界の格子点の数だけでは体積を表せないことがわかります。ここで、(0,0,0)(2,0,0)(0,2,0)(2,2,2m)を頂点とする三角すいを考えると、内部にある格子点はm-1です。この2倍した三角すいの内部の格子点の数を用いると、元の三角すいの体積は(境界の格子点の数)/6-(内部の格子点の数)/3+(2倍の内部の格子点の数)/6-1/2で表されます。これが3次元版ピックの公式です。
d次元版ピックの公式
さらに「エルハルト理論」を使うと、d次元版ピックの公式を導くことができます。3次元では三角すいを2倍しましたが、d次元で格子多面体をn倍したときの格子点の数を考えると、格子点の数は「nに関するd次多項式になる」などさまざまな性質を満たします。このエルハルト多項式については、どのようなd次元多項式がエルハルト多項式として実現するかや、エルハルト多項式が0になるnの解など、取り組むべき問題がたくさんあります。
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大阪大学 大学院情報科学研究科 情報基礎数学専攻 准教授 東谷 章弘 先生
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