「貧困の連鎖」を断ち切るためには
「貧困」とは何か
貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」があります。日本で問題となっているのは、国内の生活水準を目安にした相対的貧困です。一方、開発途上国では、最低限の生活水準すら維持できない絶対的貧困が問題となっています。SDGsでは、絶対的貧困の撲滅が目標に掲げられています。人間開発の観点から見ると、貧困とは人間として尊厳を持って生きる機会や選択肢を持たないことです。所得以外にも教育や健康などが関係しています。特に子どもがこれらへのアクセスを阻まれると、世代を越えて貧困の連鎖が続きます。
健康・教育への投資で貧困を改善
例えばケニアやバングラデシュでは子どもたちの栄養状態が悪く、おなかの中に虫(寄生虫)がいる、低体重・低身長の子が多いといった問題があります。そのため、虫下しの薬を子どもたちに与えると、その子どもたちは将来20%も多く稼げることがわかりました。世界の国々のデータでも、健康と所得の間には強い関係が見られます。
また、子どもの教育の量や質が上がれば、子どもの将来の所得が増えることは、さまざまな研究からわかっています。一例として、インドネシアの小学校建設プロジェクトでは、子どもの通学年数が1年増えるごとに、賃金が8%上がることがわかりました。そうした子どもの教育への投資は、早ければ早いほど効果的です。
プロプア政策が重要
絶対的貧困を解決するために、1980〜90年代頃までは市場改革で経済状態を改善させる方法が主流でした。しかし貧困削減に効果がなかったため、直接貧困層をターゲットに、例えば児童労働削減や子どもの教育促進のため学校で給食を提供する、子どもを学校に通わせると保護者にお金を渡すなどの「プロプア政策」が実施されるようになりました。
貧困の連鎖を断ち切るためには、大人だけではなく、子どもたちへの投資が特に重要です。税金を幼児教育に投入した場合、子どもたちは将来の選択肢をより多く持つことができ、よりよい人生を歩めるだけでなく、国の将来の税金収入も増加するのです。
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明治学院大学 経済学部 経済学科 教授 大村 真樹子 先生
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