トップアスリートは劣等感に対して、どのように対処している?

トップアスリートは劣等感に対して、どのように対処している?

劣等感は消えなくても、成長の糧にできる

アスリートが困難な経験をした際、どのように対処したかを調べることは、アスリートの心身の充足「ウエルネス」に、ひいてはパフォーマンス向上につながる大切なテーマです。意外かもしれませんが、トップアスリートであっても劣等感を抱えています。劣等感を抱えたトップアスリートが劣等感に対処しようとしたときに見られた特徴的な姿勢が「所属するチームを良くしよう」という働きかけでした。集団への意識を持つ、またはチームメートや応援してくれる人と良いつながりがあると感じることが、劣等感という課題解決を通して自分の成長を実感することにつながっていくのです。

コントロールできる「過程」に目を向ける

オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーが提唱したアドラー心理学では、劣等感を「理想とする自分と現在のギャップ」と捉えています。だとすると、めざす理想があり、ギャップを埋めるための努力を重ねるなら、劣等感はネガティブなものではなく前向きなものであり、劣等感を克服できなくても人は成長できると考えられます。努力しても結果が出ずに挫折を味わうこともありますが、結果はコントロールできません。スポーツ選手がパフォーマンスを高めるには、コントロールできる努力の「過程」に目を向ける姿勢が大切だといえるでしょう。

チームが健全にスポーツに取り組める環境を

困難な経験と周囲との関係を考える際、気をつけるべき点もあります。それは、自分と周りをバランス良く大切にすることです。人の顔色をうかがうような姿勢が良いわけではありません。人の期待に応えるために我慢を重ねることは、心理的な消耗にもつながりかねません。また、競技スポーツをしていた大学生に対する調査では、困難な経験の後「周囲の意見を生かせるようになった」や「成長の実感」など、多くの人に前向な内面変化がありました。今後さらにスポーツチームが健全に、楽しんで取り組まれる環境を整えるには、指導者サイドにも研究対象を広げることも必要でしょう。

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静岡産業大学 スポーツ科学部  講師 木村 駿介 先生

静岡産業大学 スポーツ科学部 講師 木村 駿介 先生

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メッセージ

「何となくやる気が出ない」と思うことはあるでしょう。それは単なる気分や気質の問題ではなく、例えば体調や交友関係など一つ一つ分解できて、それぞれ理由を示せて、言葉で見える化できます。それもスポーツ心理学の醍醐味(だいごみ)の一つです。これからの日々、悩んでも壁にぶつかってもいいので、挑戦を正しく恐れて楽しんで前に進んでください。

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静岡産業大学が目指すのは、ビジネスの世界で自ら考え、自ら行動し、成果をあげる力を身につける「ビジネス教育」。静岡全域をフィールドにした「アクティブラーニング」を行うなど社会で起きている課題解決策を探る「実学教育」に力を入れています。企業、団体、行政機関と連携した「寄付講座」ではビジネスの最前線で働くプロフェッショナルから仕事の内容や職場の課題について学ぶことができ、社会に出たあと即戦力として活躍できるように資格取得制度も充実しています。