個人で解決できない悩みはどうする? 学校における心の支援
心の悩みは個人の問題ではない
子どもの不登校やいじめなどの悩みは、個人単位の問題だと思われがちです。しかしスクールカウンセリングでは、より広い視野で問題に向き合い、多面的なアプローチで心の支援をすることを重視しています。
アプローチのひとつが、心理学者のユリー・ブロンフェンブレンナーが提唱した「生態学的システム理論」です。システム理論では、人間は環境との相互作用の中で生きている、と説いています。問題を個人のものとしてとらえるのではなく、個人を取り巻く環境を含めて考えるのです。
個人を取り巻く環境
例えば学校に行きにくいと思っている子どもがいるとします。その背景を探ると、クラス内の人間関係、先生との関係性、学校全体の雰囲気など、個人の力ではどうにもならない理由も浮かび上がってきます。家庭内の環境、経済面など、学校外の要因も関係しているかもしれません。このようにひとつの事象に対してひとつの観点で見るのではなく、多面的に考えると、根本的な解決に必要な要素が見えてきます。
チームで取り組む心の支援
文部科学省では2015年から「チーム学校」をキーワードに、学校現場における多職種連携・チーム支援を推進しています。教師だけに心の支援を押しつけるのではなく、専門性の違う多くの職種が連携して子どもに向き合うのです。チームとして連携する方法の研究によって、学校だけでなく地域でも心の支援について前向きに話し合う場が必要だとわかってきました。学校、地域の相談機関、医療機関など、多分野の専門家たちのつながりが増えれば、子どもを支えるネットワークができあがります。その結果、保護者が地域に相談しやすい環境ができ、教師たちの負担軽減にもつながると考えられています。
また、カウンセラーたちが主体となって多職種連携を進めるために、臨床心理士や公認心理師の養成プログラムの充実が求められています。ほかの職種を理解するためには幅広い分野の知識や、他者から状況や考えを聞き取る力などがさらに必要になるからです。
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大阪経済大学 人間科学部 人間科学科 准教授 坪田 祐季 先生
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