海を測るって難しい! 「海のものづくり」の世界をのぞいてみよう

海を測るって難しい! 「海のものづくり」の世界をのぞいてみよう

何事も計測からはじまる

私たちは病気にかかるとまず体温を測り、橋を造るときはまず川の広さを測ります。このように、計測とは何かをするときに最初に行う基本的な作業です。海や船を計測することは、海洋環境や海洋開発を考える上で重要なプロセスです。しかし、海の状態を知るために何度も海水を採取していてはきりがありません。また、海水は常に流れており、深さによって海水の状態も違うため、海全体のことを知るには一カ所の計測では不十分です。そのため、いかに効率よく時間的・空間的に計測するかが課題になります。

人には見えない光・聞こえない音で海を測る!

昔は手作業だった計測も、現在は最新の技術で行うことができます。例えば、人には見えない「深紫外線」という光を利用した計測器では、深紫外線を当てると光を吸収するという硝酸や亜硝酸の特徴を生かして、海水中の栄養塩と呼ばれる硝酸や亜硝酸を測ります。
また、超音波を利用して流速を測ることもできます。海水に超音波を発信すると、水中の浮遊物に当たった超音波が跳ね返ってきます。浮遊物が海水の流れに乗って動くと、返ってくる超音波の波長がずれて、音源が遠ざかるにつれて音が低く聞こえる現象「ドップラー効果」が起こります。それと同じ現象を利用して、どれくらいの速さで浮遊物が動いているのか、流速を測ることができるのです。

奥が深い「海のものづくり」

海だけでなく、船の計測や設計も非常に難しい分野です。船は空気と水、つまり気体と液体の両方に接しながら動く乗り物です。抵抗ひとつをとっても、空気と海水両方の抵抗を考えなくてはなりません。
海洋環境を測ったり、船を設計したりする「海洋船舶工学」は総合工学と呼ばれ、船体運動や推進性能などいろいろな分野の専門家と協力して「海のものづくり」を行います。ものづくりである以上、専門分野だけでなく社会のニーズを把握しておく必要もあります。「海洋船舶工学」は、常に社会の課題を見据えながら、海や船の奥深さに迫る学問なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 工学部 海洋システム工学科 准教授 新井 励 先生

大阪公立大学 工学部 海洋システム工学科 准教授 新井 励 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

海洋工学、船舶工学

メッセージ

ぜひ健全な好奇心をもっていろいろなことを体験してください。現代ではありとあらゆる情報があふれていて、ネットで調べればすぐに知りたいことがわかります。そのため、情報を得ただけで満足してしまって、まるでその事柄を体験した気分になってしまいます。
「空はなぜ青いのか?」「なぜ海辺が無風でも波はあるのか?」、身の回りのさまざまなことに対して「なぜ?」と思う習慣をつけることで、健全な好奇心が芽生えます。そしてその好奇心を追究していくことが、新たな発見につながるのです。

先生への質問

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大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。