ハトだって損得を考えている!?
お腹をすかせたハトは、どう行動するか
お腹を空かせたハトを実験用の小箱の中に入れます。箱の壁面には左右二つのスイッチが付けられています。これをくちばしでつつくとエサが出てくる仕掛けです。まず、ハトにスイッチをつつくとエサが出てくることを理解させます。これを「オペラント条件付け」と呼びます。次に出てくるエサの数とエサが出てくるまでの時間を右と左で変えます。右をつつけばすぐに1個、左なら5秒後に2個、エサが出るようにします。この場合、ほとんどすべてのハトが右、つまりすぐにもらえる方を選びます。
22秒後の2個と24秒後の6個、どっちを選ぶ?
ハトが何も考えずに反応しているかと言えば、決してそうではありません。実験装置の設定を変えて、右なら2秒後に2個、左なら4秒後に6個エサが出るようにしました。この場合も、ほとんどが2秒後の2個を選びます。さらに条件設定を変えて、22秒後に2個、24秒後に6個とするとどうなるでしょうか。同じように長く待たなければならないのなら、少し長く待ってエサをたくさんもらえる方を選ぶのです。これを「選好逆転現象」と呼びます。ハトの脳の内部がどう働いているのかは不明ですが、ハトも何らかの判断をして行動していることは間違いないといえるのです。
待てるようになるにはどうすればよいか?
上で述べたように、ハトは数秒といった短い待ち時間を待つことが苦手ですが、学習経験を積むことによって、待つことができるようになります。例えば、6秒後に得られる6個のエサと6秒後に得られる2個のエサの間で選ばせると、6個のエサを好むようになります。その後、これらの選択肢を何度も選択させる中で、2個のエサの待ち時間を少しずつ(0.25秒~0.5秒ごとに)短くしていきます。すると、大抵のハトは、2個のエサの待ち時間が1秒まで短くなっても、6個のエサを選び続けることができるようになります。こうした実験の成果は、心理学的な知見として、衝動性や多動性の高い子どもの自己制御の訓練にも応用されています。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 文学部 人間行動学科 准教授 佐伯 大輔 先生
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