マイクロプラスチック問題の解決には、世界の連携が不可欠
マイクロプラスチックはあらゆるところに
外食チェーンなどで、「プラスチックストローは使わない」と宣言する店が増えてきました。マイクロプラスチックによる海洋汚染の問題が表面化してきたからです。マイクロプラスチックとは、1ミリないし5ミリ以下となったプラスチック片のことを言います。海に投棄されたり、川から流れこんだりしたプラスチックは、紫外線や波の影響などで細かく砕けますが、分解されて別の物質に変化することはなく、長く海面や海中にとどまります。魚やイルカが飲みこんでしまう事例も多く、生態系への影響が懸念されています。
微細なマイクロプラスチックは、海から取った天然塩に含まれることがあり、実は人間の排泄物からも検出されています。今のところ、人体に直接的な害はないと考えられているものの、放置してよい問題ではありません。
日本近海の汚染状況
日本近海の海洋ごみによる汚染状況は、これまであまり詳しく調査されてきませんでした。実態を把握するには、海岸だけではなく、周辺海域まで船を出して調べる必要があります。ようやく近年そうした調査が進み、日本近海には、世界平均の20倍以上の量のマイクロプラスチックが浮遊していることがわかりました。ただし、そのすべてが日本から出たものとは限らず、東南アジアの国々で廃棄されたものが海流に乗って流れてきている可能性があります。海はすべてつながっているので、海洋汚染は一国だけの対策では不十分で、国際協力で解決していく必要があります。
持続的なモニタリングが重要
2016年以降、日本はアジア諸国と連携しての調査を進めていますが、まず問題になったのは、その調査手法が国によってまちまちなことです。汚染の正確な状況を把握するためには、調査手法や得られた情報を共有しなければなりません。さらに、生態系への影響や、解決策を考えるために、1~2年間だけの調査ではなく、持続的な広範囲のモニタリングをしていくことが重要となっています。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 教授 内田 圭一 先生
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