講義No.09455 環境学

マイクロプラスチック問題の解決には、世界の連携が不可欠

マイクロプラスチック問題の解決には、世界の連携が不可欠

マイクロプラスチックはあらゆるところに

外食チェーンなどで、「プラスチックストローは使わない」と宣言する店が増えてきました。マイクロプラスチックによる海洋汚染の問題が表面化してきたからです。マイクロプラスチックとは、1ミリないし5ミリ以下となったプラスチック片のことを言います。海に投棄されたり、川から流れこんだりしたプラスチックは、紫外線や波の影響などで細かく砕けますが、分解されて別の物質に変化することはなく、長く海面や海中にとどまります。魚やイルカが飲みこんでしまう事例も多く、生態系への影響が懸念されています。
微細なマイクロプラスチックは、海から取った天然塩に含まれることがあり、実は人間の排泄物からも検出されています。今のところ、人体に直接的な害はないと考えられているものの、放置してよい問題ではありません。

日本近海の汚染状況

日本近海の海洋ごみによる汚染状況は、これまであまり詳しく調査されてきませんでした。実態を把握するには、海岸だけではなく、周辺海域まで船を出して調べる必要があります。ようやく近年そうした調査が進み、日本近海には、世界平均の20倍以上の量のマイクロプラスチックが浮遊していることがわかりました。ただし、そのすべてが日本から出たものとは限らず、東南アジアの国々で廃棄されたものが海流に乗って流れてきている可能性があります。海はすべてつながっているので、海洋汚染は一国だけの対策では不十分で、国際協力で解決していく必要があります。

持続的なモニタリングが重要

2016年以降、日本はアジア諸国と連携しての調査を進めていますが、まず問題になったのは、その調査手法が国によってまちまちなことです。汚染の正確な状況を把握するためには、調査手法や得られた情報を共有しなければなりません。さらに、生態系への影響や、解決策を考えるために、1~2年間だけの調査ではなく、持続的な広範囲のモニタリングをしていくことが重要となっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 教授 内田 圭一 先生

東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 教授 内田 圭一 先生

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水産環境学、環境保全学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は今の仕事に就くまでに、教員免許や船員になるための免許などを取得しました。あなたも、取れる資格は何でも取っておこうと考えてみてはどうでしょう。将来チャンスが巡ってきたときに、資格を持っているからこそチャレンジできることもあるのです。
私自身も免許を持っていたため、東京海洋大学の練習船の船員として5年間勤め、その体験が今の研究に大いに役に立っています。本学は、ほかの大学ではできない素晴らしい体験ができるだけでなく、いろいろな資格も取れる大学です。あなたも船に乗って海へ出て、海の研究をしてみませんか?

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。