『機動戦士ガンダム』のロボットのかっこよさを科学する

『機動戦士ガンダム』のロボットのかっこよさを科学する

「経験と勘」だけでなく

海外でも日本のアニメは人気ですが、アニメなどの日本のコンテンツの総売り上げに占める海外の割合は5%程度しかありません。クールジャパン推進事業は、日本のアニメ、ゲーム、マンガや特撮ヒーローものなどの「クールな(かっこいい)」コンテンツを海外に輸出しようという日本政府の方針によるものです。
これまでのコンテンツは芸術家やディレクターなどの「経験と勘」によって制作されてきましたが、これを科学的な理論に置き換え、工学的なプロセスで作品を制作しようとする動きがあります。

コンテンツを分析し工学的な予測をする

『仮面ライダー』シリーズを分析したところ、昭和では単純な話であったのが、平成になるとドラマ性が重視されていることがわかります。かつて敵のショッカーは世界征服のため殺人を犯すこともありましたが、現実社会での青少年による犯罪増加を受けて、ストーリーの中から重大犯罪は姿を消しています。これらの変遷の傾向は、すべての作品を調査し、分類することでわかってきます。過去の作品の分析は、これからのコンテンツ作成のための工学的な予測に役立ちます。

科学的な設計指針を見出す

『TIGER&BUNNY』というアニメでは、従来は黒だった人間などの枠線が赤茶色でした。そこで、枠線の色の印象評価をすると、赤茶色は黒より迫力はないが、やわらかい印象があることがわかりました。また色によって印象が違うので、シーンによって色を変えることもできます。つまり、色による科学的設計の指針になるのです。また「萌える」顔や声を、数値的に割り出す研究も行われています。
『機動戦士ガンダム』シリーズの『機動戦士ガンダムAGE』は、シリーズの中でも人気がなく低視聴率でした。なぜ人気がなかったのかを調べてみると、ロボットのデザインが原因でした。これまでの視聴率の高かったロボットは重量感がありゴツゴツした印象ですが、『機動戦士ガンダムAGE』ではなめらかで、軽い印象でした。このことが人気のなさの科学的根拠だったのです。

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先生情報 / 大学情報

金沢工業大学 メディア情報学部 メディア情報学科 ※2025年設置構想中 教授 山田 真司 先生

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メディア情報学

先生が目指すSDGs

メッセージ

音楽を含むエンターテインメント分野、芸術分野においても、現在では、工学的な最先端技術が使われています。しかし、これらの技術のほとんどは、機器やシステムに使われているのみです。作品やコンテンツそのものは、今も芸術家やディレクター、プロデューサーなどと呼ばれる人たちの「経験と勘」によって制作されています。私の研究の究極の目的は、この「経験と勘」の部分を科学的な理論に置き換え、工学的なプロセスによってコンテンツや作品を作成することにあります。

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金沢工業大学では、講義等で「知識を取り込み」、それを仲間との実験・演習の中で「思考・推論」し、組み替え結びつけることで「新たな知識を創造」し、その成果を「発表・表現・伝達」する独自の学習プロセスを全科目で導入しています。さらに高度な研究環境の中で産学協同による教育研究を実践するとともに、夢考房など知識の応用力を高める多彩なフィールドを実現することで、獲得した知識を知恵(応用力)に転換できる「自ら考え行動する技術者」を育成しています。