化学と生物学との融合 ケミカルバイオロジーが創薬で大活躍!

ケミカルバイオロジーとは?
ケミカルバイオロジーとは、化学と生命科学が融合した研究領域です。化学の視点から、生命科学の諸問題にアプローチし、病気のメカニズムの解明や、治療に役に立つ化合物を開発する研究が行われています。
一般的に薬学や医学のイメージが強いですが、農学系の学部でも盛んに研究が行われています。
食品成分の化学構造を利用した「薬の種」づくり
農学部では食品に関する研究が盛んですが、食品に由来する化合物の化学構造を医薬品開発に利用する取り組みが行われています。具体的には、合成医薬品の化学構造と、食品に由来する化合物の化学構造という、関連性の薄い組み合わせの構造をくっつけて、一つの化合物にすることで、従来では考えられなかった新しい化学構造を持つ化合物を作り出す方法が考えられています。この方法で作られた化合物は、糖尿病のモデルマウスで、既存の医薬品に見られる副作用を示さずに、血糖値を下げる効果が確認されており、糖尿病の新しい薬となる可能性があります。
薬剤でタンパク質の分解を制御
薬剤というと、ヒトなどの生体に影響を及ぼす物質のイメージがあると思います。この薬剤を、医薬品ではなく”道具”として用いて、細胞の機能を自在に操るための研究が行われています。生体は、様々な物質によって構成されていますが、その中で重要な物質の一つが、タンパク質です。タンパク質が、化学反応や物質の輸送など細胞の中で役割を果たすことで生命機能が維持されます。最近では、薬剤の投与により、目的とするタンパク質のみの分解を、選択的に操る方法が開発されています。つまり、薬剤を、目的とするタンパク質の分解の引き金を引く”スイッチ”として用います。この技術は、従来用いられてきた遺伝子を壊す方法に比べて、素早く、かつ自在にコントロールすることができ、基礎研究分野だけでなく、遺伝子治療や細胞治療といった医療分野への応用も期待されています。
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先生情報 / 大学情報

筑波大学 生命環境学群 生物資源学類 准教授 宮前 友策 先生
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ケミカルバイオロジー、生物分子化学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?