金属ナノ構造化技術で色を自在に制御する 〜金はなぜ金色か?〜
色はどう決まるのか
日常には多彩な色があります。炎のように自ら光を出すものは、光そのものが色として目に入り、光の振動数により低い順に赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の色に見えます。これらは赤・緑・青という光の3原色の組み合わせで成り立っており、3つを合わせた色は白になります。
一方で自らは光を出さない物体は、光の反射により色が見えています。赤いリンゴは、赤い光を反射するので赤に見えます。別の視点で考えると、3原色の緑と青の光が物質に吸収されているともいえます。吸収される色の補色(混ぜると白になる残りの色)である赤色が結果として反射しているとも考えることができるのです。
金はなぜ金色?
金属には自由電子があり、光が当たるとそのエネルギーを受けて自由電子が光と同じ振動数で動きます。電子の振動エネルギーは同じく光として放出されるので輝いて見えます。電子がどれくらい速いスピードまで振動できるかは、金属の種類によって限界があります。「金」の場合、緑の光より速い振動はできません。つまり緑より振動数が高い青は反射しないため、その補色となる黄が目に見える色(金色)となります。
金属をナノサイズの粒子にすると、電子の振動は空間的な制約を受けます。そのためゆっくりとした大きな振動ができなくなりナノサイズの金は赤も反射できなくなります。その結果、緑だけ反射します。粒子は小さいので反射する面がなく、緑の光は散乱・散逸します。金のナノ粒子は白から緑をなくしたマゼンタ色に見えます。
紀元前から使われていた金属ナノ粒子
実はナノ粒子は紀元前からガラスに混ぜてステンドグラスなどに使われてきました。現在は、ナノスケールで金属の構造を制御し、光に対する応答性を自在に変えられます。例えばスマートフォンなどのカメラに金属膜のナノスケール構造を作って吸収する色を制御すれば、薄い金属膜1枚でより鮮やかな色の表現ができるようになります。光と電子を扱う学問「プラズモニクス」は、生活を便利にする製品を生み出す可能性を秘めているのです。
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静岡大学 工学部 電子物質科学科 教授 小野 篤史 先生
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