感染菌をだまして病気の発症を防ぐ高分子ゲルとは?

感染菌をだまして病気の発症を防ぐ高分子ゲルとは?

世の中にあふれる高分子ゲル

水などの液体が網目状の物質に吸いとられ、中に閉じ込められた固体、これがゲルです。例えば、タピオカは芋のデンプンが水を含んだゲルです。豆腐をザルの上に置いておくと一部の水が漏れ出すのに対し、コンニャクでは変化が起こりません。ゲルの穴の状態や分子の結合の様子など、内部の構造が違うからです。ソフトコンタクトレンズのように、含まれる水の量をわざと少なく制限したゲルもあります。分子量が大きな物質から作ったものは高分子ゲル、小さな物質から作ったものは低分子ゲルと呼ばれます。油を固めて捨てるための商品は低分子ゲルを形成します。その一方で、丈夫な弾力性のある材料を作るには高分子ゲルが適しています。

薬の効かない薬剤耐性菌の出現

病原菌を退治するには抗生物質と呼ばれる薬を使います。しかし、これまでの薬が効かなくなった薬剤耐性菌が現れて、世界の医療現場で問題となっています。新しい薬を開発しても、遺伝子の変異した菌がいつのまにか現れて、薬が効かなくなってしまうのです。そこで、菌を殺さずに毒の生産のみを止める新しい方法が提案されています。
情報伝達分子を周囲に放出して仲間と通信し、毒を作る号令を待っている病原菌がいることがわかってきました。この菌は仲間が増えると一斉に毒を作って外部の相手を攻撃し始めます。情報伝達分子を取ってしまえば、菌は仲間がいることに気がつかないために毒を作らず、毒がなければ発病もしない、というわけです。

高分子ゲルが感染症を防ぐ

菌の情報伝達分子を吸着する物質を高分子ゲルに含ませると、医療現場に役立ちます。手術後は傷口からの感染症が心配されますので、高分子ゲルを湿布やばんそうこうの形にして傷口をふさいでおけば、効果が期待できます。むし歯の原因となる口腔内の細菌に対しては、ガムのようなものを作り、寝る前にかむのもいいでしょう。このようなバイオメディカルに関する研究は、工学部の化学分野でも積極的に進められています。

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宇都宮大学 工学部 基盤工学科 応用化学コース 教授 加藤 紀弘 先生

宇都宮大学 工学部 基盤工学科 応用化学コース 教授 加藤 紀弘 先生

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基盤工学、物質環境化学

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メッセージ

あなたが何かに興味を持っているなら、ぜひ本物を見てください。例えば映画だったら、家のテレビではなく、映画館の大きなスクリーンで見ると迫力が違います。音楽なら、生の演奏に触れてみてください。録音では聴き取れない音が感じられ、とても心に響きます。
体験できる場所に足を運び、自分の目で見ることで感動すれば、次の好奇心が生まれ、やりたいことが見つかります。興味を持った学問があれば、実際に研究している先生に会うのもとても重要なことです。自分の目で見たものを信じて、進んでいきましょう。

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