工夫すれば能力を引き出せる! 発達障害の子どもを支える研究
発達障害と工夫
自閉スペクトラム症(ASD)のような発達障害に対して、「コミュニケーションが苦手」、「困る場面が多い」などのイメージを抱いていませんか。しかし周囲が工夫すれば、発達障害のある人が持つ能力を引き出せることがわかってきました。ASDとされる人の多くは相手の思考を読み取ることに苦手意識を持っているため、「言わなくてもわかる」という接し方では悩んでしまうでしょう。しかし日時や場所、これから取り組む内容などを具体的に説明すると、きちんと行動できる人も多くいます。作業療法士は発達障害に対する知識を持ったうえで、患者が過ごしやすくなるような工夫を行っています。
検査で子どもの特性を探る
個人差はありますが、発達障害は成長するほど日常生活への影響が大きくなります。なるべく早期に症状を突き止めて適切な工夫をし、影響を最小限にする必要があります。そこで、発達障害のある子どもができることと苦手なことを把握するために、「Vineland-II(ヴァインランド・ツー)適応行動尺度」という検査が導入されつつあります。適応行動とは、他者とのコミュニケーションなど、日常生活を円滑にするために必要なスキルです。子どもに関するさまざまな質問を保護者に尋ねて、適応行動の現状を探ります。
よりよい検査をめざして
Vineland-IIは子どもの適応行動を細かく分析できますが、1回の検査に約1時間半かかることが難点です。そこで、より短時間で子どもの適応行動を検査する方法の研究が進められています。手法のひとつが、一般的な発達段階との比較です。何歳で何ができるようになるか、といった年齢ごとの発達段階は、作業療法士なら誰もが知っています。その知識から、子どもが特定の適応行動をとれないのは疾患が原因なのか、それとも年齢が若すぎるからなのかを判断するのです。疾患が原因の場合は、接し方の工夫を保護者に教えます。判断基準を確立するために、年齢に応じた適応行動が改めて調査されています。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 助教 丸本 つぐみ 先生
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先生への質問
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