植物が持つ無限の可能性を引き出す「バイオテクノロジー」

植物が持つ無限の可能性を引き出す「バイオテクノロジー」

バイオテクノロジーの進化

より良い農作物を作るための「品種改良」は、従来、試行錯誤を繰り返し、経験に基づいて行われてきました。特定の性質を生み出すためには長い時間をかけ、偶然性に頼るやり方で行われてきたのです。しかし、現在では、バイオテクノロジーと遺伝子工学の技術を生かして、ピンポイントの特性を持った植物を生み出すことが可能になりました。

植物の生存戦略に学ぶ

植物には、「細胞死」というシステムがあり、ストレスを受けた細胞が自滅してしまうという現象が起きることがあります。なぜそうしたことが起きるかというと、その部分の細胞が死ぬことで、体のほかの場所に栄養を送り、全体が死んでしまうことを避ける役割があるためです。また植物には、細胞があればそこから体を再生する「分化全能性」という能力があり、挿し木などで個体を増やすことができます。こうしたメカニズムを調べていくと、植物が環境の変化にどう対応しているのか、ストレスを受けたときにどう反応しているのかということを解明することができます。
そうすることで、環境ストレスに強い植物や収穫の多い植物を作ることができるようになると考えられています。また、太陽エネルギーから有機物を生産することができる光合成のシステムを解明すれば、より効率のいい光合成を行える植物が生まれるかもしれません。

植物は大切なパートナー

植物しか持たない細胞内器官である葉緑体で行われる光合成は、動物にはないシステムです。酸素を吸って二酸化炭素を吐く私たち動物にとって、二酸化炭素を吸って酸素を出し、さらに動物が作れない物質を生産してくれる植物は、大切なパートナーだと言えるでしょう。私たちにとって、植物はエネルギー資源であり、食べ物であり、安らぎでもあります。
食料不足、エネルギー問題、温暖化など、いま地球はさまざまな問題に直面しています。「細胞培養」「細胞融合」「遺伝子組換え」など、バイオテクノロジーの技術を駆使することで、それらの問題に挑戦していくことが期待されているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

埼玉大学 工学部 環境共生学科 教授 川合 真紀 先生

埼玉大学 工学部 環境共生学科 教授 川合 真紀 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

環境共生学、植物遺伝子工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

これからあなたは、進路を決めて受験に向かっていくことと思いますが、文系・理系に限らず、高校生の間にぜひコミュニケーション能力を磨いておいてください。研究者というと、一日中研究室にこもっているというイメージがあるかもしれませんが、実はコミュニケーション能力は研究者にとっても大事なスキルです。
自分の研究内容や成果を人に伝え、重要だと思ってもらうことが大切になってくるからです。受験勉強だけでなく、コミュニケーションにも気を配って、自分の能力を伸ばしていってください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

埼玉大学に関心を持ったあなたは

埼玉大学は、総合大学として有為な人材を育成する、首都圏大学として社会とリンクし還元する、世界に開かれた大学として国際交流を推進する、の3つが特色です。TOEIC600点を目標に画期的な英語教育を実施しています。学生諸君が、高度な専門知識に加えて幅広い教養と国際感覚を持ち、社会に貢献することができる市民・職業人に成長できるよう、教育上のさまざまな工夫を施しています。