3Dプリンタを使った金属加工法が、世の中の「困った!」を解消
新たな金属加工法
金属の加工法といえば、材料を削り出して製品をつくる「切削」や、溶かした金属を鋳型に流し込む「鋳造」などが一般的です。しかし近年、3Dプリンタで層を積み上げていき、溶かした金属を立体的に造形していく「アディティブマニュファクチャリング」の研究が盛んです。大型製品の例として、海外ではすでに、3Dプリンタでつくった橋や船のスクリュープロペラなどの実証実験が行われています。材料をその場で溶かして形をつくり上げるという工程が、3Dプリンタでできるようになると、ものづくり業界で深刻化している人手不足解決に役立ちます。材料は必要な分だけその場で使用するため、無駄を減らすことができます。
安心して使用できる製品をつくるには?
大型製品を製造するための3Dプリンタによる金属加工法は、ソフトクリームを例にとるとイメージしやすいでしょう。ソフトクリームを上手につくるには、クリームが落ちるスピードやカップの直径に合わせて手を動かし、徐々に直径を小さくしていきます。3Dプリンタも同じ原理ですが、注意すべき点は材料が金属であるということです。材料を溶かすための熱エネルギー量によって溶け方が変化し、固まる過程においても表面張力や重力などの影響を受けます。形状精度や信頼性を高めるには、熱が高すぎても低すぎても、動きが速すぎても遅すぎてもいけません。そのため、最適な条件や制御の仕方を調べる研究が行われています。
自由な設計で新たな付加価値を
切削加工の場合、削る刃物が製品の内部まで届くように設計する必要があります。また鋳造加工は、溶かした金属が鋳型の隅々までしっかり流れる形にしなければなりません。しかし3Dプリンタは、そのような形に対する制約が少ないため自由な設計が可能です。結果的に、今までできなかった性能をもたせるなど、新たな付加価値を創造できます。個々のニーズに合わせたものづくり、そして社会における課題解決が求められる時代に、「アディティブマニュファクチャリング」は大きく貢献するはずです。
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先生情報 / 大学情報
埼玉大学 工学部 機械工学・システムデザイン学科 准教授 阿部 壮志 先生
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