講義No.12105 化学 生物学

花粉症の原因は花粉だけではない! 大気汚染との深い関係

花粉症の原因は花粉だけではない! 大気汚染との深い関係

花粉症と大気汚染

日本では花粉症患者がたくさんいます。医師の間では、花粉を多く吸い込むと花粉症が発症すると考えられてきました。しかし大気中の花粉に付着した物質などを分析すると、別の原因が明らかになりました。花粉は大気汚染物質と組み合わさることで、花粉症をより深刻に引き起こしていたのです。

花粉の破裂がアレルギーの引き金に

花粉はそのままの状態ではサイズが大きいため、体内の奥深くまで侵入することができません。ところが黄砂や車の排気ガスのような大気汚染物質と接触すると、花粉の表面が傷つきます。傷んだ花粉は大気中の水分を吸い込んで膨らみ、5分程度で破裂することが明らかになりました。花粉の中には花粉症の原因となるアレルゲンの微粒子が含まれており、破裂で放出されます。この微粒子はサイズが小さく、人間の呼吸器系に吸い込まれると簡単に奥深くまで入り込んでしまうのです。そのため、大気汚染物質が比較的多い都心部では、花粉症患者が増加する傾向にあります。

資源と汚染発生源に注目した対策

花粉対策として、トドマツから抽出した精油が注目されています。服にスプレーしたり部屋に置いたりすると、大気中の汚染物質を軽減し花粉のアレルゲンが持つ力を抑制できるからです。他にも花粉対策のために木炭を使った住宅建設も行われています。木炭に含まれる炭素には、大気汚染物質やアレルゲンなどを吸着し空気をきれいにする力があります。トドマツ精油や木炭は、廃棄バイオマスから作られました。空気清浄機のように使用中に電気を必要としないので、環境にもやさしいです。このように自然の資源をうまく利用した対策は、環境問題を解決するうえでも重要です。
そもそも大気汚染は、人間が自然の資源を適切に使わなかったときに起こります。例えばPM2.5は工場などから放出される有害な化学物質が原因で生まれました。このような大気汚染の発生源を減らすために、有害化学物質をあまり出さないグリーンケミストリー技術が研究されています。

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埼玉大学 工学部 応用化学科 教授 王 青躍 先生

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メッセージ

環境化学は、物理学や生物学などさまざまな学問分野と密接に関わっています。学問を追究するうえでは語学力も大切だと思います。ぜひ大学で幅広く学び、世界に通用する力を身につけてほしいです。また、他の方との学術交流の際、最初から信じるのではなく、疑問を持ってほしいです。
私も周囲から仮説を否定されたことが何度もありましたが、自分の疑問や好奇心を大切にして研究を続けた結果、新たな発見ができました。とことん自分を信じて学問を追究することが大切です。「やればできる」という言葉を胸に、勉強をがんばってください。

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