未来を思索するために建築ができること
「T型フォード」と「ダイマキシオンカー」
20世紀前半、自家用車が世界中に普及するきっかけとなったのは、T型フォードと呼ばれる自動車の爆発的なヒットでした。馬車に似せてつくられたT型フォードは、大量生産による低価格で売り出され、大衆に受け入れられました。
しかし当時、フォードと全くデザインの異なるダイマキシオンカーという車も開発されていました。3輪で8人乗り、涙滴型の機能性に優れた自動車で、そのデザインは当時としてはかなり奇抜なものでした。美的、機能的に優れたものが必ずしも世の中に受け入れられるとは限らなかったのです。
デザインにとって大事なこと
東大寺の国宝「不空羂索(ふくうけんじゃく)観音立像」は漆(うるし)でできており、細かいデザインが施されています。一方、薬師寺の国宝「月光(がっこう)菩薩像」は、ブロンズ製なので漆ほどの細かい細工はされていません。デザインは、形や発想の問題だと考えがちですが、素材や技術に大きく依存しているのです。
デザインスゴロクの重要性
池辺陽という建築家が考案した、「デザインスゴロク」という考え方があります。生活様式、美的条件、組立方式、コスト、環境、目的、機能、材料、流通、という建築デザインを考える上で必要な9の要素をスゴロクのコマのように並べたもので、ルールは「どこから始めてどこで上がってもよいが、必ずすべてのコマを通らなければならない」というものです。例えば、デザインで注目されがちなのは外形、機能、目的などですが、それだけでは建築がダイナミックなものになりません。どんな建築をつくるにせよ、すべての要素が一度は検討されるべきものです。
以前建築は、庶民にとっては与えられるものでしたが、現在では、自分のライフスタイルに合った住宅をつくれるようになりました。建築家には、クライアントのニーズをくみ取りつつ、必要な条件をバランスよく考えながらデザインしていくことが求められています。
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先生情報 / 大学情報
千葉工業大学 創造工学部 建築学科 教授 遠藤 政樹 先生
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