最小限のエネルギー消費で建築物の最大限の快適性を実現する方法とは
「人と環境に優しい建築物」を実現する研究
建築物には、美しさはもちろんのこと、地震や台風に耐えられる強度、経年劣化しにくい耐久性、快適性など、さまざまな性能が求められます。そのため建築学は、「計画・意匠系」「構造・材料系」「環境・設備系」「施工系」の4分野に大別され、それぞれの分野で専門的な知識・技術を学びます。特に、環境意識が高まっている近年は、快適性を維持しながら省エネ性能も高める「建築環境・設備工学」分野の研究が活発に行われています。
快適性と省エネ性を両立させる3要素
冷暖房設備や照明器具をあまり使わないようにすれば、エネルギー消費量は減らせます。しかし、そこで仕事をしたり生活したりする人たちにとって、その環境は決して快適とは感じられないでしょう。快適な屋内環境と省エネを両立するためには、太陽光や風などを上手に利用する「パッシブデザイン」と、建物の状態に合わせて冷暖房機器や照明器具などを効率的に使う「アクティブデザイン」、それらを最適に運用する「制御管理」の3要素を考慮してバランスをとる必要があります。
用途によっても異なる「快適性」のあり方
「快適性」のあり方は、建物の用途によっても異なります。例えば、病院の手術室の場合、動き回っている医療スタッフと、代謝量が極度に低下している患者が同じ室内にいます。そこでは冷風で室温を調整する「対流空調」のみよりも、天井や床面に設置した放射パネルに冷水を流す「放射空調」も併用することによって、患者の身体的負担を軽減できる可能性が高まります。この放射空調を寝室に導入したところ、睡眠の質が向上したという実験結果も報告されています。
このような室内の温熱環境や空気の流れを三次元的に把握するため、建築環境・設備工学の分野では「CFD(数値流体力学)」を活用した数値シミュレーションを行ったり、実験室実験や実際の建物で計測したりすることもあります。このように研究の切り口が多様である点も、建築環境・設備工学の面白さのひとつと言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
北九州市立大学 国際環境工学部 建築デザイン学科 教授 白石 靖幸 先生
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