手術したらどうなる? 情報技術で患者の疑問や不安の解消へ
側弯症の手術後の体形を予測する
背骨が左右に曲がっている、「脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)」という病気があります。かなり大きく湾曲してしまった場合、背骨をまっすぐにするための金属の棒を埋め込む手術が必要になることがあります。手術をすると手術前よりも脊椎が伸びるので、体形が変わります。患者にとっては、自分の体形がどう変わるのかは気になるところです。そこで、手術前の骨の状態から、手術後の体形を予測するための研究が手掛けられています。
大量のCT画像を解析
背骨の状態の計測にはCTの画像を使います。そのCT画像から骨の情報を抜き出して、3D画像にする技術が開発されています。大勢の患者の手術前後のCT画像を解析し、手術前の骨の状態から手術後の状態を予測します。有限要素法という手法を使うことで、小児の側弯症についてはかなり高い予測精度が得られるようになりました。現在は、成人についての研究が進められています。小児と成人では、骨を支える筋肉の状態や脊椎の硬さなどが異なるため、さまざまな調整を行うことが必要なのです。予測精度をあげるには、筋肉と骨の関係をはじめとする医学的な知識が欠かせません。医学分野の専門家と緊密に連携しながら、研究が進められています。
医療関係者と共に歩む
情報技術が医療分野に貢献できることはたくさんあります。ただし実際に貢献するためには、医療分野の中に入っていくことが必要です。生の医療知識を得るためだけではなく、医療関係者との対話から新たな視点や気づきが得られるのです。また、研究に必要なデータ提供の許可を患者から得るのも、研究の結果としてわかったことを患者に説明するのも医師の仕事です。そのため、側弯症の手術後体形予測でも、医療現場のスタッフが使いこなせるシステムとして作り上げねばなりません。加えて、誰が費用を負担するかという問題も発生することでしょう。医療関係者と手を携えて、さまざまな課題を乗り越えた先に未来が開けるのです。
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公立はこだて未来大学 システム情報科学部 複雑系知能学科 教授 加藤 浩仁 先生
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