建築素材としての木材
木材は使うまでに樹齢分寝かせる
樹木は、山から切り出され川を使って運ばれて、木場と呼ばれる貯木場に運ばれます。木場は東京の地名にもありますが、日本中にある地名です。材木を保管するには淡水ではなく塩水に浸し、浸透圧により材木内部の水分を抜きます。数カ月塩水につけることで、材木の中のアクも合わせて抜けます。この後、建築に使用する木材は陸に揚げた上、樹齢分「寝かせる」、つまり樹齢50年の木は50年置いておくと、十分変形が終わり、反ったり、割れたりしなくなると言われています。木は生きているので、その中の水分が平衡状態(一定)になるまで長い時間を必要としているのです。このように、十分な期間「寝かせた」後、製材しているのです。
メインテナンスによって木の長所が発揮される
例えば日本では元来、風呂も木でできていました。最近では、猫足付きの置き型浴槽というのを見かけますが、日本の風土にはほとんど適しません。日本の高温多湿の環境で猫足付きの浴槽を使用すると、すぐにカビの巣窟になり、その後の掃除がとても大変な作業になります。
それに比べて、檜(ひのき)で作られた風呂は殺菌効果が高く、こまめなメインテナンスによってその効果が永く維持されます。風呂以外でも食材を切る時に使う、まな板も従来は檜でした。日本人は檜そのものに殺菌効果があることを経験的に知っていて、まな板に傷が付いてカビが入りやすくなったら、またまな板を削りながら使っていたのです。
現代ではメインテナンスフリーな材料に高い価値が与えられていますが、メインテナンスフリーな材料など高温多湿な風土の日本においては存在しません。この風土に抗ってしまった結果、建築材料すらも使い捨てという姿勢を生み、大量のゴミが発生したのです。総檜の風呂は、きちんと手入れすれば100年でも使用できるものです。人間同様に、手入れは毎日必要になることですが、そうした手間を嫌わずに材料と付き合うことで、その材料が本来もつ優れた特性を引き出せるのです。
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名古屋市立大学 芸術工学部 准教授 久野 紀光 先生
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