アリの集団の知恵は、スーパーコンピュータを超える?

アリの集団の知恵は、スーパーコンピュータを超える?

アリは集まると探しものがうまい

アリは、単体では知能のとぼしい生物です。ところが、集団になるとエサを見つけるのが非常にうまくなります。アリはフェロモンという物質を出しながら歩き、仲間がそのフェロモンをたどって歩く習性があります。巣から遠い場所でエサを見つけた場合、そのルートに残されたフェロモンは少しずつ蒸発し薄まっていきますが、近距離にエサがある場合は、フェロモンが強いのでほかのアリが行きやすくなり、フェロモンはより濃くなっていきます。このようにして、より近い位置にあるエサを効率的に運べるようになるのです。こうした集団による知恵を、「集合知」と呼んでいます。

最適ルートを見つける方法

囲碁で良い手を見つけたり、セールスや配達などで複数の場所を回る際にどう回ると効率的かなどの問題を、「最適化問題」と呼びますが、この問題の解決には、集合知が向いています。
配達で25カ所を回る場合の最適ルートをコンピュータで調べるとします。すべての組み合わせをしらみつぶしに調べると、ルートは、3.1×10²³通りで、これを解くには、最新のスーパーコンピュータでも122万年かかります。しかし多くの人による情報を集めた集合知の理論を使えば、正解であることは証明できなくても、現実的により良い答えを見つけることができます。

「競馬」から「株価」の予測まで

例えば、競馬の勝ち馬を予想する場合、一人で予想するよりも、複数の人間の予想を合わせたほうが、勝率が上がることがわかっています。的中率50%の人が集まっても勝率は変わりませんが、的中率55%の人が19人集まって多数決をとるとします。そうすれば、当たる確率は67%になります。同様に、49人いれば76%、499人いれば99%の確率で当てることができるのです。
こうした集合知の理論は、宅配便の配送計画、水道・電気などのライフラインのつなぎ方、株価の変動予測など、さまざまな現実の問題に応用が可能な考え方なのです。

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先生情報 / 大学情報

茨城大学 工学部 機械システム工学科 教授 鈴木 智也 先生

茨城大学 工学部 機械システム工学科 教授 鈴木 智也 先生

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知能情報システム工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

「アイデア」というものは、自然界に落ちているものです。私の研究している「集合知」も、アリの行動から見てとることができます。
そして、アイデアを見つけるためには、視野を広く持つことが大切です。視野をどう広げていいかわからなければ、まずはいろいろなことに興味を持ちましょう。「変わりたい」と思う変身願望が、新しいドアを開けてくれます。変化を恐れず、新しい価値観にチャレンジしてください。たとえ痛みをともなったとしても、現状維持ではなく、「現状から脱却する力」を養ってください。

先生への質問

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茨城大学は、人文社会、教育、理、工、農の5学部からなる中堅的地方総合大学です。校地は水戸・日立・阿見の3地区に分かれており、各キャンパスとも学生を中心とした環境づくりを進め、教育研究施設の充実を図っています。幅広い教養教育と高度の専門教育により専門家として自立できる人材を育成するため、学部・大学院にて多様な学習の場を用意し、各分野で世界を先導する研究活動を推進しています。