生物の群れに学ぶ、ネットワークの効率化
大規模化、複雑化するネットワーク
技術が進歩するにつれて、ネットワークは大規模化、複雑化し続けています。そんな中で、「自発的に秩序を形成する生物の群れ」の動きにヒントを得て、ネットワークの制御に応用しようという研究が進められています。生物の群れは、リーダーがいて常に「こう動け」と命令しているわけではありません。それぞれの個体が自発的に行動し、協調することで群れ全体の秩序を形成しているのです。一方で、ネットワークにおいては、それぞれの端末や機器が相互に作用しながら動作しています。この類似点に着目して、ネットワークの仕組みを効率化できないかというのが、この研究の出発点です。
アリの行動からルーティングを考える
例えばアリが巣に餌を運ぶ際に、行列を作ることはよく知られています。これは餌を見つけて巣に帰るアリから化学物質であるフェロモンが出て、そのほかのアリはそれをたどって餌を見つけているのです。また、このフェロモンは揮発性でいずれ消えてしまいます。そこで最も盛んに使われる最短経路だけにフェロモンが残り、結果としてそこに行列が作られることになります。
ネットワークの分野には「ルーティング制御」という概念があり、これはネットワーク上でデータをやりとりするときに適切な転送経路を割り出す技術を指します。アリのこの現象はルーティング制御に応用できると考えられ、研究課題の一つになっています。
人間社会で活用するには課題も
生物の群れに着想を得た研究が進めば、ネットワーク上でアクシデントが発生した際も、柔軟に対処を行うことができるなどのメリットが生まれます。それでも、現実世界での実装がされていないのは、今あるネットワークの仕組みとどうすり合わせていくかといった課題が解決されていないからです。例えば、実際の生物の群れのように気まぐれに機能が変化しては人間社会では役に立ちません。しかし、こういった問題点がクリアになれば、今よりももっと効率的なネットワークが完成すると期待されています。
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