非接触で診る〜皮膚に触れないバイタル測定技術の開発~
医療と工学を横断する「生体医工学」
生体医工学あるいは医用生体工学は、医療の領域に特化した工学で、情報工学との親和性も高い学問分野です。人工臓器や新しい医療機器の開発といったハードウェア的な側面と、患者に合わせた測定方法の最適化や収集した人体の情報を診断や治療に生かす手段の研究といったソフトウェア的な側面があります。
肌の弱い新生児のための非接触測定
医療現場では、「呼吸」「体温」「血圧」「脈拍」などの情報を、「バイタル」データと呼びます。バイタル測定にはさまざまな専用機器が使われていますが、その多くが体への接触を必要とします。また、継続してデータを取り続けるためには、各種センサを体に固定した状態が基本となります。大人でもコードが煩わしくなったり、センサを貼り付けておくテープで皮膚がかぶれてしまったりすることもあります。特に新生児は、皮膚が薄いため、コードやテープだけでなく測定に用いるわずかな赤外線でも負担となり、体調の回復の妨げになってしまうことも少なくありません。この問題を解決するために、非接触でのバイタル測定技術の開発が進められています。
病院だけでなく家庭での安心にも
非接触の測定方法の1つとして、少し離れた場所から専用のカメラで測定するアプローチがあります。コンピュータでその映像を処理してバイタルを測定する仕組みですが、新生児は呼吸の動きが激しく、けいれんのような動きが加わることもあるため、従来の大人向けの方法では測定が困難です。現在は、新生児の動きにも対応できる画像処理方法の開発によって、脈拍と呼吸はある程度正確に測れるようになっています。血圧の測定についても研究中で、より正確に複数のバイタルを測ることができれば体調の急変にも対応できるようになります。将来的には、家庭での見守り技術への応用などの展開も期待されています。新しい医療システムの開発は、患者の治療だけでなく、広く人を助けることにつながっていくのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
三条市立大学 工学部 技術・経営工学科 教授 加藤 綾子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
生体医工学、工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?