講義No.12074 機械工学 通信・情報工学 理工系その他

非接触で診る〜皮膚に触れないバイタル測定技術の開発~

非接触で診る〜皮膚に触れないバイタル測定技術の開発~

医療と工学を横断する「生体医工学」

生体医工学あるいは医用生体工学は、医療の領域に特化した工学で、情報工学との親和性も高い学問分野です。人工臓器や新しい医療機器の開発といったハードウェア的な側面と、患者に合わせた測定方法の最適化や収集した人体の情報を診断や治療に生かす手段の研究といったソフトウェア的な側面があります。

肌の弱い新生児のための非接触測定

医療現場では、「呼吸」「体温」「血圧」「脈拍」などの情報を、「バイタル」データと呼びます。バイタル測定にはさまざまな専用機器が使われていますが、その多くが体への接触を必要とします。また、継続してデータを取り続けるためには、各種センサを体に固定した状態が基本となります。大人でもコードが煩わしくなったり、センサを貼り付けておくテープで皮膚がかぶれてしまったりすることもあります。特に新生児は、皮膚が薄いため、コードやテープだけでなく測定に用いるわずかな赤外線でも負担となり、体調の回復の妨げになってしまうことも少なくありません。この問題を解決するために、非接触でのバイタル測定技術の開発が進められています。

病院だけでなく家庭での安心にも

非接触の測定方法の1つとして、少し離れた場所から専用のカメラで測定するアプローチがあります。コンピュータでその映像を処理してバイタルを測定する仕組みですが、新生児は呼吸の動きが激しく、けいれんのような動きが加わることもあるため、従来の大人向けの方法では測定が困難です。現在は、新生児の動きにも対応できる画像処理方法の開発によって、脈拍と呼吸はある程度正確に測れるようになっています。血圧の測定についても研究中で、より正確に複数のバイタルを測ることができれば体調の急変にも対応できるようになります。将来的には、家庭での見守り技術への応用などの展開も期待されています。新しい医療システムの開発は、患者の治療だけでなく、広く人を助けることにつながっていくのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

三条市立大学 工学部 技術・経営工学科 教授 加藤 綾子 先生

三条市立大学 工学部 技術・経営工学科 教授 加藤 綾子 先生

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生体医工学、工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今はどの大学にどんな先生がいて、何の研究をしているのかを調べやすくなりました。進学先を選ぶ際には、偏差値だけにとらわれず、自分が興味を持っているテーマを大事にして選んでください。自分の興味を軸に据え、いろいろなことに関心を広げて経験をすることで、思ってもみなかった世界が広がります。
特に海外に目を向けているのであれば、英語はとても役立ちます。研究職だけでなく企業に勤めても英語でやりとりする機会は今後ますます増えるので、高校生のうちにしっかり基礎を身につけておきましょう。

先生への質問

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三条市立大学に関心を持ったあなたは

三条市立大学は、2021年4月に開学した新しい大学です。多様な加工技術が集積するこの地域全体をキャンパスとし、機械工学を軸として多岐にわたる分野の学問を組み合わせた学修と、実践的な技術感覚を養う産学連携実習を特長としています。多様な工学技術についての深い知識に加えて、経験をもとにした創造性や実践力があり、技術と経営を効率的に組み合わせる技術マネジメント力を有する「創造性豊かなテクノロジスト」を育成します。