オスとメスが別種? 驚異の「ウメマツアリ」
オスがオスを産む? ウメマツアリ
普通、オスとメスが交配すると、両方の遺伝子を引き継いだ生命体が誕生します。しかし、ウメマツアリの場合はそうではありません。次の女王アリが生まれるときは、母親の遺伝子しか受け継がれず、オスには父親の遺伝子しか受け継がれません。つまり、オスはオスのクローンを作り、メスはメスのクローンを産んでいます。ウメマツアリのオスとメスは交配可能ながら、それぞれ遺伝的に分化している別種の生き物といえるものになっています。
生きるために働きアリをつくる
たいていの生き物は、メスが単為生殖できるようになると、オスを持つ意味がなくなり、オスはいなくなってしまいます。その後はメスだけが単為生殖をすることになるのですが、ウメマツアリの場合は、働きアリだけが父親と母親の両方の遺伝子をミックスされて産まれてきます。アリは働きアリ抜きでは社会を維持することができず、すぐに死に絶えてしまうので、働きアリは絶対に必要です。そこで、メスだけで単為生殖ができるのにオスが必要とされるのです。また、オスが父親のクローンとして作られるのは、働きアリになるのにオスとメスの異なる遺伝子が混ざり合うことが必要だからだと思われます。
常識では考えられない生き物のナゾ
オスとメスが遺伝的に分化し、それでも共存するというのは、多くの生き物の常識では考えられない、びっくりするような現象と言えます。生物学の専門家も、これは驚くべきことだと言っています。しかし、なぜ働きアリを作るときだけ遺伝子を混ぜなければいけないのかについては、まだはっきりとした答えは出ていません。
このように進化生物学というのは、生き物のナゾを解くことがテーマになっています。ただ単に動物を観察するとか、フィールドワークをするだけではなく、動物や生き物について、なぜそうなっているのかを「HOW」と「WHY」の両面から深く考えることが重要なのです。
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