エネルギー問題も解決! 「可逆計算」を使うプログラミング研究

未来のコンピュータに使える「可逆計算」とは
コンピュータ・プログラムの情報処理は、「計算」によって行われます。その計算の多くは元に戻せない「非可逆計算」です。例えば3+2の答え5から元の3と2は一意には導き出せません(1+4や0+5といった可能性も)。
一方、「可逆計算」では、計算結果から元の入力を一意に導き出せるような仕組みが用いられます。例えば、3と2を使って3+2=5、3ー2=1という答えが得られますが、これらの答えをもとに (5+1)÷2=3、 (5-1)÷2=2 という計算をすれば、元の入力である3と2が一意に得られます。
このような可逆計算は、量子コンピューティングの理論的基礎であり、低消費電力な高性能計算を実現する未来のコンピュータシステムの鍵として発展していくことが期待されています。
可逆計算をプログラミング言語に応用
可逆計算を支援するプログラミング言語の理論も研究されています。可逆的に動作するプログラムの仕組みを使うことで、これまでにない新しい使い方が可能になり、プログラミングの幅が広がっています。
すべてのプログラムは、「構造化定理」によれば、1つの入口と1つの出口をもつ部品を3つの制御構造を「順次、分岐、繰返し」という組合せをすれば作れると知られています。これに基づく構造化プログラミングは、現在では標準的な手法となっています。従来、構造化定理の可逆版は成り立たないと考えられていました。しかし、成り立つことが理論的に証明され、可逆プログラミングにおいても、構造化プログラミングが使われています。
AI時代のエネルギー問題も解決
可逆計算のメリットの1つは、情報が失われることによるエネルギー消費が、原理的に全くないことです。
現在、AIが大量に使われるようになり、その膨大な計算をする際のエネルギー消費が問題になってきています。AI研究者には、可逆計算によりエネルギー需要が大幅に削減されると予測する人もいて、エネルギー問題の解決につながることを期待する人もいます。
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南山大学 理工学部 電子情報工学科 教授 横山 哲郎 先生
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