「工学」の発展も医療の高度化を支えている
医学と工学の知識で患者さんを支える専門職
医療の現場では、医師や看護師ばかりでなく、「臨床工学技士」というエンジニアも活躍しています。人工呼吸器や人工心肺装置、人工透析器、点滴や輸血を行う輸液ポンプ、電気メスや麻酔器など、医療現場ではさまざまな高度医療機器が活用されています。それらの医療機器が、必要なときに正常に働かないと大変です。そこで、医学と工学の知識を併せ持つ臨床工学技士が、医療機器の保守点検やメンテナンスを通じて患者さんの命を支えているのです。
磁気刺激を与えることで脳機能を活性化
近年、医用工学の分野で注目されているのが、頭皮上に置いたコイルにより発生させた磁気で脳に直接刺激を与える「経頭蓋(けいとうがい)磁気刺激(TMS)」という装置です。脳細胞や脳神経に磁気刺激を与えることで、脳の活動を活性化させるもので、うつ病やパーキンソン病などの治療に利用されています。磁気は頭皮や骨を越えて脳に伝わるので、患者さんが刺激痛を感じたり跡が残ったりすることはありません。また、脳梗塞などの後遺症のリハビリに、TMSを活用する研究も進められています。
活躍の場がますます広がる「臨床工学技士」
脳は片側の働きが活性化すると、反対側の働きを抑えてバランスを取ろうとします。そのため、脳梗塞などのリハビリにTMSを用いる場合、活発になっている側の活性を抑えつつ刺激を与える調整が必要になります。また、脳血管の閉塞を防ぐため、金属製の部品やコイルで血管を広げている患者さん、心臓にペースメーカを入れている患者さんの場合、TMSが行えません。そこで、頭皮ではなく手や足に磁気刺激を与えることで脳を刺激する方法も研究されています。
TMSの研究が進めば、脳や神経に関わるさまざまな治療法やリハビリが、大きく様変わりするかもしれません。医用工学の発展にともない、臨床工学技士が活躍するフィールドも、今後ますます広がるでしょう。
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東海大学 文理融合学部 人間情報工学科 准教授 佐藤 綾 先生
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