女性がキャリアアップしにくいのはなぜ? 美容師の職場から考える

女性がキャリアアップしにくいのはなぜ? 美容師の職場から考える

女性美容師の店長はなぜ少ない?

結婚や出産を機に、職場での活躍の機会を失う女性が数多く見られます。例えば美容師は女性も活躍している職業の一つですが、昇進したり店長になったりする人は男性が多いです。女性の中にも美容師としての腕やコミュニケーション能力などが高い人材はたくさんいます。それでも結婚や出産を機に辞めてしまう人が多く、キャリアを積み上げにくい状況が生まれているのです。改善策を探るために、美容師へのアンケート調査とヒアリングが行われました。

申し訳なさがキャリアの壁に

調査の結果、女性美容師は子育てに専念するためだけでなく、「周囲に申し訳ないから」という理由でも辞めていることがわかりました。美容師は顧客からの指名が入ることがあります。このとき「Aは子どもの看病で急に休みになったので今日はBが担当します」などと、ほかの従業員が即座に仕事を代わることはできません。また、勤務時間が長いと子どもの面倒を見ることが難しくなります。顧客にもほかのスタッフにも迷惑をかけてしまうと思った女性美容師の中には、仕事を辞める決断をする人もいました。美容師のほかにも、介護職や医師など、同じ人が担当し続けることで利用者が安心感をえられる仕事では、同様の課題が生じている可能性があります。

柔軟な働き方を実現する

申し訳なさによる離職を防ぐために、短時間勤務を採用した美容室があります。顧客からの予約が入ったときだけ仕事に来る、という柔軟な働き方も可能です。プライベートの時間をきちんと確保できるようにしたところ、育児をする女性の離職率が下がり、美容師としての技術も磨き続けられるようになりました。時間を限定してでも働きやすく、経験を途絶えさせない環境を作ることが、キャリアアップにつながる可能性があります。また、女性が活躍しやすい職場は、男性も含めた誰もが働きやすい環境にもつながるでしょう。そのためさらに視点を広げて、ダイバーシティという観点で働き方を探ろうと研究が進められています。

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東海大学 文理融合学部 地域社会学科 教授 荒尾 千春 先生

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メッセージ

プライベートと仕事は切り離しては考えられないものでしょう。だからこそ誰もが生き生きと働くための方法は何か、などのテーマに関心を持ってもらいたいです。また、街の人の声、国の施策が決まった背景などにも関心を持つと、社会の事象を自分ごととしてとらえられるようになるでしょう。大学では正しく関心を掘り下げて社会に発信できるように、メディアに流されないための知識や効果的な発表方法も学びます。「自分にできることは何か」を考えながら、一緒に興味を深めてみませんか。

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