タコ焼きクライシス タコの養殖への挑戦
養殖への挑戦
タコ焼きをはじめ、すしや煮付けなど、タコは日本の食卓になじみ深い食材です。しかし、各地で記録的な不漁が続き、漁獲量は年々減少しています。このままでは、タコ焼きがタコ抜きになりかねません。なんとかして養殖でタコを増やす必要があります。しかし、タコの養殖は非常に難しく、現在も試行錯誤が続いています。
タコのシェルター
タコ養殖の課題の1つが、大人になってからのケンカです。大人のタコは通常、水槽の底に一定間隔で沈んでいます。しかし、ほかのタコが少しでも近づくと、すぐにケンカになってしまうのです。それぞれをタコつぼに入れても、距離が近いと、隣のタコつぼに腕を伸ばしてちょっかいを出しはじめます。最終的に、弱いタコはかじられたり腕を取られたりして水槽から逃げ出し、外で干からびてしまうのです。そのため、狭い水槽で多くのタコを養殖するには、ケンカが起きないシェルターが必要になります。
研究では当初、多層の本棚状に設計していました。実際に水槽に入れてみると、一番下の段には入るものの、上の段にはタコが入りません。そのうちにタコがシェルターを動かして横倒しになり、段の仕切りが縦方向になったところ、仕切りの間にタコが何匹も入ってくつろぎ出したのです。その状態だとタコが隣り合ってもなぜかケンカが起きないことから、横倒しの形状を生かして、最適な間隔や高さを実験で割り出し、養殖用のシェルターが完成しました。
さらなる課題
ほかに、タコの幼生の育成も課題です。タコの幼生が水の中を漂える環境を水槽で再現するほか、養殖のタイミングに合わせて餌となるカニの卵をかえすのは難しいために、代わりになる人工餌の開発も進められています。さらに、幼生が育った段階で共食いが始まり、大人になる前に数千匹が数十匹しか残らないという状況になります。養殖方法の確立には、まだ多くの課題が残されていますが、これらを解決した先には、タコの食材の安定供給に加え、海への放流により自然の資源回復が期待されます。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 海洋学部 水産学科 教授 秋山 信彦 先生
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