針先の超音波から診断画像を作り出せ!
診断に欠かせない超音波
人間が聴くことのできない高い周波数の音を超音波といいます。超音波による診断は、現代の医療には欠かせません。体内の画像化技術にはX線写真、X線CT、MRIなどもありますが、超音波は、生体の動きを実時間観測できる唯一のモダリティであり、また被曝の心配がなく、機器が比較的安価などのメリットから、小規模な診療所などでも使われています。
超音波診断装置は一般に、体表から体内に音波を発し、跳ね返ってきたエコーデータを受け取って処理することにより、超音波画像を作り出します。そのため、同じエコーデータを採取しても、処理の仕方により画像の質は異なります。
針で刺すだけで診断したい
腹部など広い範囲をみる超音波装置のプローブは、超音波を発する振動子100~200個をアレイ状に並べたものです。それに対し「穿刺(せんし)型超音波顕微鏡」は、振動子を1個だけ針先につけて患部に刺し入れ、細胞レベルの超音波画像を撮ります。現状のがんの確定診断では、病変部の細胞を摘出して薬剤で染色することでがん細胞の有無を調べます。しかし、穿刺型超音波顕微鏡では針を刺すだけなので、患者の身体的負担が少なく、その場で診断結果が得られます。また、超音波での診断では、硬い、粘性がある、弾性があるなどの音響的特徴に関する情報も得られるため、今まで判断できなかった疾患も調べられる可能性があるのです。
超音波の進歩による未来の医療
ただし、振動子1個だけで発振した場合、通常の方法では音波が広がってしまい空間分解能が得られません。そのため、送信波形や周波数を変えるなどの工夫とともに、限られたデータから精細な画像を得るための研究が進められています。こうした送受信の方式と信号処理の技術がさらに進めば、将来には簡易な機器で得られたデータをスマートフォンで画像化して病院に送信するといった、在宅での手軽な健康診断が実現するかもしれません。
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東京都立大学 システムデザイン学部 電子情報システム工学科 教授 田川 憲男 先生
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