どっぷりと自然につかる体験「野外教育」で人間らしさを取り戻す
野外教育とは
アウトドアスポーツやキャンプといった自然の中での身体活動を通して、対象者の気付きや成長を促す教育手法を「野外教育」といいます。野外教育では、自己概念や自信、あるいは協調性やコミュニケーション能力が養われるだけでなく、自然に関する知識や自然を保護するための行動を学ぶこともできます。現在の学校教育では、主に理科や総合学習の時間に自然の大切さや環境に配慮した行動を教えますが、自分の身体を使って、どっぷりと自然につかる体験こそが「自然が好き」「環境を守りたい」といった肯定的な感情を生み、自然を守る行動にも結びつくのです。
キャンプによる成長と変化
野外教育の分野では、子どもが参加するキャンプを企画・運営し、そこから教育的効果を測るという研究がよく行われています。キャンプでは、普段遊んでいる公園とは違う圧倒的な自然環境に身を置き、野外炊事やテント泊という野外生活をベースに、縦走登山や沢登りといった冒険活動を行います。その中で、自然に対する畏敬の念を抱いたり、湧き水やご来光といった自然の恩恵に感謝したり、山頂からの眺めに感動したりと、さまざまな体験を重ねます。そこで起こった変化や成長をアンケート調査やインタビュー調査によって記録し、分析することで野外教育の成果を明らかにしていきます。
人間らしさの回復
本来、人と自然は密接な関係にあるものですが、機械化やIT化が進んだ現在、自然を畏れ、その中で生き抜く人間らしさが失われつつあります。野外で自ら考え行動し、自然との共存や自分の命に対する責任を学ぶ野外教育の意義は、この人間らしさを回復するという点にあります。また、時に危険をともなう野外教育を実践するには、専門的な知識やスキルをもつ指導者の力が必要不可欠です。欧米では野外活動・教育の支援や指導が産業として定着していますが、日本ではまだ十分とは言えません。野外体験とそれを指導する人材の重要性を発信し、その市場価値を高めることも、野外教育研究の重要な意義なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東海大学 体育学部 生涯スポーツ学科 准教授 岡田 成弘 先生
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