長引く痛みの要因は、脳の働きと性格にあった!?
リハビリテーションをしてもすぐに治らない痛み
スポーツや仕事などで腰を痛めることは誰にでもあり得ます。そんな時には、柔軟性や筋力をつける運動や動作の指導などのリハビリテーションを行い、姿勢や筋の状態を調整することで、3~4週間ほどで痛みは収まります。ところが検査をしても背骨(脊柱)や筋肉の異常などの特別な原因もないのに、数カ月以上も痛みを訴える人がいます。それにはストレスや心理社会的要因といわれるものが影響していると考えられます。
痛みを感じやすい性格が明らかに
心理社会的要因には、脳の活動が関わっています。脳には、痛みを感じる部分と、急激な喜怒哀楽の感情をつかさどる「情動」の部分があります。長く痛みを感じる人は、実は痛みを感じる部分ではなく、情動の部分が強く働いているのではないかと考えられています。一度腰を痛めた人は「また腰が痛くなるのではないか」と恐れを抱いて、同じ動作を避けるようになります。それを「恐怖回避思考」と呼びます。この状態では行動や活動量が徐々に減っていき、体力や筋力が低下してさら腰痛が悪化するという悪循環に陥ります。また心理社会的要因の一つとして性格が考えられます。腰痛に関連する脳活動と性格を測定したところ、物事に敏感な神経症傾向よりも、真面目で物事にこだわる誠実性傾向の程度が影響する結果となりました。
腰痛を長引かせないために
腰痛は、日本人が訴える体の痛みではトップを占めるほど身近です。検査をしても原因がはっきりしない腰痛に対し、事前の性格検査で自分に誠実性傾向があるとわかれば、痛みの引き金となるストレスをためないように生活をコントロールして腰痛が長引かせない予防が可能となります。またストレスの度合いは脳活動を計測して調べますが、NIRS(近赤外線分光法)を活用したヘアバンド型の機器からデータをスマホに送り、自分で管理できるようにすることも可能です。理学療法士の活躍の場は手足や体に直接アプローチするだけではなく、心理社会的要因へのアプローチへと広がっています。
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東北福祉大学 健康科学部 リハビリテーション学科 准教授 田邊 素子 先生
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