大気突入機はなぜ高温になるのか? ~熱から機体を守る方法とは~
「大気突入機」は高温にさらされる!
宇宙を飛行する宇宙機には、人工衛星や惑星探査機などさまざまな種類があります。その中に、惑星の大気に突入する大気突入機があります。例えば、小惑星を探査した「はやぶさ」では、採取したサンプルを大気突入機で地球に持ち帰りました。大気突入機が大気に突入すると白く光って見えます。これは、機体の温度がとても高温になるためです。では、なぜ大気に突入すると高温になるのでしょうか?
「空力加熱」と機体を守る仕組み
「はやぶさ」の大気突入機が地球の大気に突入するスピードは秒速12kmに達します。これは、博多から鹿児島までをたった20秒で移動するすさまじいスピードです。機体の前方にある空気はこのスピードで機体にぶつかり、せき止められるために圧縮されます。そして、空気は圧縮されると温度が高くなる性質があるため、機体にぶつかる空気の温度は高くなります。そのため、機体は高温の空気にさらされることにより強く加熱されます。この現象を「空力加熱」と言います。空力加熱はスピードが速いほど強くなります。「はやぶさ」の場合では、機体の表面温度は3千度にまで達したとみられます。このように、大気突入機は空力加熱により強く加熱されるため、機体を熱から守る仕組みが必要です。「はやぶさ」の場合では、CFRPというプラスチックで機体を包みました。プラスチックは金属よりも熱を通しにくい性質があります。また、熱を受けて溶けますが、溶かすことに熱が使われるため、通過する熱はその分だけ減ります。このように、熱から守るためにプラスチックを使うことは一見頼りなさそうに思えますが、とても効果的なのです。
隕石落下の防災にも役立つ
地球大気に突入してくる物体としては隕石もあります。大きな隕石が落下すると、地球規模での災害となる可能性があります。この災害を予測するためには、大気に突入した物体のふるまいを解明することが重要になります。そのため、大気突入機の空力加熱の研究は、隕石落下の防災にも役立ちます。
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先生情報 / 大学情報
長崎総合科学大学 工学部 工学科 機械工学コース 准教授 松川 豊 先生
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