温度差を使って発電する!
材料は無限にある
「物性物理学」は、物質の持つさまざまな性質を考える学問です。スマートフォンでもパソコンでも、身近にあるさまざまな電子機器は、その中で使われている材料の性質によって、その機能が生み出されています。電気をよく流すか流さないか、磁石につくかつかないかなど、物質にはいろいろな性質があります。物質の持つ性質は、その物質を構成している原子の種類や比率、並び方によってさまざまに変化し、その組み合わせは無限です。よりよい材料を開発すれば、よりよい生活を送れるようになるのです。
温度差で発電するって、どうやって?
火力発電所は、ある意味では「熱」を使って発電しています。化石燃料を燃やして発生した熱エネルギーで水を沸騰させ、蒸気を使ってタービンを回して発電します。つまり石油や石炭の化学エネルギーを熱エネルギーに変えて、タービンの機械エネルギーにし、最終的に電気エネルギーを作っています。
これに対して、熱エネルギーを直接、電気エネルギーに変える方法があります。それが熱電発電です。ある種の材料は、片方を熱くし、もう片方を冷やしておくと、つまり両端に温度差を与えると、電流を担うキャリアに偏りが発生し、両端に電圧を発生させます。このとき、この材料の両端に豆電球をつなげば、電圧が発生していますので、豆電球が点灯します。つまり温度差から電気が作り出されたことになります。
排熱利用で期待される温度差発電
この原理を利用すれば、排熱から電気エネルギーを生み出すことができます。例えば、パソコンでは発生した熱をファンを使って温度を下げています。つまり熱が捨てられています。この排熱を使って発電することができるのです。街中の電気に利用するほどの大量の発電には向きませんが、ごみ処理場や自動車のエンジンから出る排熱などを電気エネルギーに変換すれば、社会全体としてのエネルギーの利用効率が上がります。熱電変換材料の研究がもっと進めば、将来は各家庭で温度差を利用して発電する時代が来るかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 海事科学部 マリンエンジニアリング学科 教授 佐俣 博章 先生
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