聖徳太子型コンピュータで、宇宙誕生や素粒子の謎に挑む!
宇宙誕生の瞬間、何が起こったのか
「宇宙はどうやってできたんだろう」「原子の中には何があるんだろう」などと考えた経験はありませんか。それら目に見えない世界の謎を、実験と理論とで解き明かすのが「素粒子物理学」です。
原子核は陽子と中性子が結合したハドロンでできていて、それはさらに、クォークなどの素粒子によって構成されています。宇宙が生まれた瞬間、ハドロンが「溶けた」状態でクォークが飛び回る「クォーク・グルーオンプラズマ」が発生し、それが宇宙に存在するさまざまな元素の「もと」になったと考えられています。
研究が進むとデータ処理が間に合わなくなる
スイスにある世界最大の素粒子物理学研究機関では、宇宙誕生の瞬間に近い状態を、実験室レベルで再現する実験に成功しました。今後、研究が進めば、未知の素粒子や物理現象が発見されるかもしれません。
さて、そうなると今度は、データ処理の問題が発生します。素粒子の実験ではゼロに近い「点」を検出するため、6億ピクセルの3Dカメラで、毎秒1000枚の画像を撮影します。そのデータ量は1秒あたりDVD240枚分にもなり、データを整理して圧縮しても、年間50PB(ペタバイト)、つまり約5200万ギガバイトのデータ量に達します。従来のコンピュータでは、データ処理だけで大変な時間とコストがかかってしまうのです。
「聖徳太子型コンピュータ」が生まれる?
集積回路の専門的な理論は難解なので、たとえ話で説明しましょう。レジが1台しかないコンビニに100人の客が並ぶと、最後の客は99人分待たねばなりません。しかし、レジを10台に増やせば、最後の客でも9人分待てば自分の順番がやってきます。さらに、「一度に10人の話を聞き分けた」という聖徳太子のような人がレジに立てば、もっとスピードアップするでしょう。素粒子物理学の研究をさらに進化させるため、従来とは異なるやり方でデータ処理を行う、新たなコンピュータシステムの開発も進められているのです。
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先生情報 / 大学情報
長崎総合科学大学 工学部 工学科 電気電子工学コース 教授 大山 健 先生
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