サーモグラフィーで宇宙を見る! 惑星探査ミッションのカメラ開発

サーモグラフィーで宇宙を見る! 惑星探査ミッションのカメラ開発

新たな惑星探査ミッション

地球近傍の軌道には地球に衝突する可能性のある小天体が存在します。衝突の危険性が高い小天体の軌道を人為的に変える方法が確立されれば、地球の危機を回避することができるでしょう。そこで世界各国が協力して国際小惑星探査ミッション「AIDA」が始まりました。まずNASAの探査機DARTを小惑星に衝突させ、軌道を変えます。その後探査機Heraを打ち上げ、衝突が小惑星に及ぼした影響を調査する計画です。

サーモグラフィーで小惑星を見る

小惑星の硬さや衝突でできたクレーターの規模などを観察するために、温度の変化を撮影するためのサーモグラフィーを搭載したカメラが日本で開発されました。サーモグラフィーを使うと小惑星を構成する石の硬さや大きさなどがわかります。例えば石のように硬く大きなものは、熱しにくく冷めにくい性質を持ち、一方で砂のように柔らかく小さいものは熱しやすく冷めやすい性質を持っています。このカメラで小惑星の構造を探るのです。さらにHeraのカメラでは石の鉱物的特徴を得るために、熱赤外線を透過する7枚の狭帯域フィルターを世界で初めて採用しました。

隕石のもとを発見

小惑星の連続したサーモグラフィーを世界で初めて観測したのは、「はやぶさ2」です。はやぶさ2が取得した小惑星リュウグウ表層のサーモグラフィーからは、世界を驚かせる発見がありました。大半の小惑星はもろく、地球に衝突するまえに空中で壊れて消えてしまいます。そのため小惑星内部には隕石(いんせき)になり得る硬い石は存在しないと考えられました。しかしリュウグウには丈夫な硬い石もあることがわかりました。この発見は、隕石発生のメカニズムを解明するための大きな手がかりとなりました。
Heraミッション後を見据えた研究も進行中です。従来は小惑星の上空から画像を撮影していましたが、着陸して探査を行うための方法も検討されています。着陸時に故障しない装置など、研究すべきテーマは山積みです。

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前橋工科大学 工学部 情報・生命工学群 准教授 荒井 武彦 先生

前橋工科大学 工学部 情報・生命工学群 准教授 荒井 武彦 先生

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リモートセンシング、惑星科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校生のうちから物事をきちんと考え、効率のいい実行方法を探してみてほしいです。がむしゃらにぶつかるのもいいですが、「実現するためにはこれとこれが必要だろう」と道筋を立てて行動することも大切です。そのためにも、普段からわからないことがあれば誰かに質問する習慣をつけましょう。自分の考えをすぐに実行に移すのではなく、ほかの人にも聞いてみると、より効率のいい方法が見つかるかもしれません。若い時期は限られているので、多くのことに取り組むためにも、周囲を巻き込んで挑戦してほしいです。

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